ちくちく日記

DTP系備忘録。真面目にやってます。

新しいCreative Cloudの料金体制など色々。

Adobeの新しいCreative Cloudが発表になりましたね。
大雑把に発表をまとめると

今までのCreative Suiteという製品ラインを終了、新しくCreative Cloudというブランド名に変更。
Creative Cloudはパッケージでの販売を行わない、Creative Cloudからのダウンロード販売のみ。

ってことで。

まあAdobeがいずれパッケージをやめ、ダウンロード販売のみにしぼるだろうというのは、かなり予想できてた話でさほどの驚きはないですね。(Acrobatなどの一部ソフトはパッケージ販売も継続するようですが)

新しいCreative Cloudの発表会では「時代の変化に合わせてクリエイティブツールもいち早く進化するためにネットワーク上の販売に移行する」的な美しい説明がされていたようですが、そ〜んな理由が表面上のものであることなど、私たちには分かりきっていることであります


AdobeにとってCreative Cloud

違法コピーユーザーを閉め出し
パッケージを廃止することで、印刷や輸送のコスト、在庫管理のリスクをなくし
定額制という(永久に続く)課金方式で安定した収入を継続して得続けることができる

という、素晴らしい販売方法であり「時代のニーズに素早く応える」ことなど、これらのメリットに比べたら二の次の話。Adobeという営利企業にとっては、自社の利益を一番に考えるべきであり、これにさっさと移行するのに、ためらう理由などないのです。パッケージ販売を継続して欲しいとかいうのはユーザーの勝手な言い分でAdobeにとってはまったくメリットがないのだ。


だから、AdobeCreative Cloudのみに販売をしぼってくるのは営業的にすごく正しい。



さて、その内容の詳細について、全体の詳しい解説はどっか他のニュースサイトとかがやってると思うので、私は自分が気になった部分のみ。
(現時点で私が聞いた話だけから書いてますので内容に間違いがある場合があります。)

バージョンナンバーについて

とりあえず、Creative SuiteCreative Cloudという名前に変わるという事で、じゃ、今後Creative Cloud v1という感じになるのか?とおもいきや、Creative Cloudには数字のバージョン Noはつかないんだそうで。
つまり、アプリケーションのバージョンについては、アプリケーション個別のバージョン Noでの管理に戻るということです。
Illustratorならv17、Photoshopならv14ですな。うへぇ、ここ数年すっかりCSのバージョンで覚えていたので、個別バージョンなんて、意識してなかったよ…。またここに戻ってきたってことかい。

CSとの違いとして、CSのような一斉バージョンアップは行わず、各アプリケーションごとのバージョンアップになるらしい。
あの全アプリ一斉にバージョンアップするっていうのは傍目に見てもムリがあったもんなぁ。各アプリ進化するスピードが違うんだから、無理矢理足並みそろえたってアプリごとにバージョンアップの厚みに差が出ちゃうのは分かりきった話で…。
Adobeもそこには懲りたのか、今後は各バージョンごとに適宜アップデートすると。

これ、気になるのは、バージョンアップをしょっちゅうやられると、業務で使っているアプリについては環境をあわせていくのが大変になるんだけど…。
ただ、IllustratorPhotoshopのようなメインアプリについては年に一回程度マイルストーン的なバージョンアップを行うという話もあってたので(多分メジャーVupに近いもの?)大きな機能追加は年に一回程度、他の小さい修正は適宜行うって感じなのかもしれない。


Creative Cloudそれぞれの契約プラン

CCの契約プランには「個人版」「グループ版」「教育向けプラン」と3プランある。このうち「教育向けプラン」はいわゆる学割プランで一般の人には関係ないので置いておくとして、残りの「個人版」「グループ版」について


「個人版 通常版」

なんか、各プラン初回の特別割り引きとか既存ユーザーの割引とかで一見安そうな値段が表に出てたりするのだけど、そんなものにごまかされず、本来の値段をみると


5,000円/月々


これは、一年間の年間契約の時の値段であり、月ごとに契約を解除できる月払いプランだと


8,000円/月


である。

年間契約の場合、年間使用料60,000円になる。これはAdobeストアで購入すれば月払いにできるが、他の方法で購入した場合、支払い方法によっては一括払いする必要がある。

年間契約の場合、年の途中で契約を解除することもできなくはないが、解除した段階の残りの月数分の半額は没収されるし、解約に伴う手続きが死ぬほどめんどくさく、ほとんど解約不可能にちかいという話もきく。(参考:Adobe Creative Cloud 年間プラン解約 最短ルート攻略

途中解約しないまでも、1年間の使用後継続しないという方法もあるわけだが、基本、自動更新する設定になっている。うっかりこの設定のままだといつまでも料金を払い続けることになり、Adobeの思うつぼである。(さらにこの自動更新の設定は契約終了の1ヶ月前にならないとオフにできないらしい。徹底してんなAdobe


これはAdobeに限らずだけど、こういった継続サービスってのは、提供側はできるだけ契約を継続し続けてほしいものだから、解約手続きをやたらと分かりにくくしてる物が多い。
入会はWebのボタンクリックで出来るけど、解約には平日の就業時間内に電話での手続きが必要、とかね。
サービスを購入する前に「どうやったら解約できるか」をチェックしておくべきだと思う。

特に今回は初年度が割引で安く設定されてるからなー、一年後に支払いがあがってびっくり!でも解約できないっ!ってなる人多そう。



「個人版 単体サブスクリプション

今回のCCでは「単体サブスクリプション」ってプランも用意されている。
これは全部のアプリケーションは必要ないって人向けに、特定のアプリケーションだけを契約できるもの。


2,200円/月(1アプリケーション 年間契約 26,400円)
3,200円/月(1アプリケーション 月ごとに契約解除)


このプラン、個人的には結構いいなと思う。

CCの標準プランでついてくるすべてのアプリが必要って人はそんなにいないと思う。中にはPhotoshopだけ使いたいというような特定アプリがあれば十分って人も多いだろう。
DTP業務の中にはIllustratorPhotoshopだけあればいいってとこも多いだろうし、それなら月額4,400円(年額52,800円)で標準プランよりお得。

私は自宅ではAdobeアプリを使う事はほぼないけど、数年に一度ぐらい、Illustrator等を使いたいな…って時がある。たまに使う為だけに基本プランに入るのはもったいないけど、どうしても必要な時なら単体サブスクリプションで月払い3,200円なら払ってもいいと思う(しかし、その程度の作業ならデモ版でもこなせてしまうけど…)


Adobe IDは複数持ちできる

Creative Cloudの契約はAdobe IDにひもづいている。基本プランはひとつのIDにつき、一つの契約しかできない。(単体サブスクリプションはアプリケーションごとに複数の契約が可能。ただし同一アプリを複数契約はできない)

Creative Cloudでは1ライセンスで2台までのインストールが認められているけれど、3台以上のマシンを持っている人はそれでは足りない。またサブスクリプションで同じアプリを2つ以上契約したい時も困る。

その場合は、Adobe IDを複数登録する。つまり、違うメールアドレスでもってIDを登録するわけ。
これは違反ではない。ここ、ちょっとポイントね。


「グループ版」

個人版に対して、企業向けという位置づけなのが「グループ版」これには通常の「グループ版」と個別カスタマイズ可能な「エンタープライズ版」というのがある。


「グループ版 エンタープライズ版」

これは一言でいっちゃうと「なんでもありプラン」である。

たとえば、Creative Cloudはネットワーク接続が必須な訳だけど、でも業務によっては外のネットワークに絶対接続をしてはならない!という環境だってありえる。そういう場合、ネットワーク接続をしなくても運用できるCreative Cloudツールを提供できます…といったカスタマイズが可能なプラン。

えっ、そんなカスタマイズが可能なの?と喜ぶのは早い。

エンタープライズ版が利用できるのは「大規模な組織の場合」のみ。
大規模な顧客の場合、個別にAdobeの担当者がソリューションのカスタマイズをお伺いしますとのこと。もちろん値段も要相談。
ちなみに大規模とは50ライセンス以上ということらしいです。Adobeの担当者と相談というプランなので50ライセンスあれば何でも聞いてもらえるって訳じゃないだろうけど 


「グループ版 通常版」

では、大規模ではない企業ユーザーはどうするのか
個人版に対して、企業向けという位置づけなのが通常の「グループ版」なのだが…これちょっと微妙なプランだと思う。

値段から見てみる。


7,000円/月(1シートあたり)


1シートってのは1ライセンスっていうか1台分のお値段。つまり台数が増えればこの数は増える。
月7,000円。個人版より高い値段に設定されている。「グループ版」だから当然複数台で使う事が前提だとおもうのだけど、ボリュームディスカウント的な考えはないみたい。

なぜ個人版より高いのか。

グループ版には個人版にはない機能があって、その機能の付加価値として値段が高く設定されている…のだろう。
その付加価値に+2,000円の価値があるのかというのが気になるところ。


その個人版にはない機能とは

・100GBのクラウドストレージ(個人版は20GB)
・機能制限のないクラウドサービス
・請求と管理配布の一元化
・1シートにつきエキスパートサービス2回使用可能


うーん……。

100GBのクラウドストレージ、一応ファイルの履歴保存みたいな機能もあるみたいだけど、これ正直ほんとに大事な業務であれば他の会社がデータをどうとでもできてしまうクラウドストレージにはデータを預けられないし、どうでもいいデータをやり取りするだけなら無償のクラウドストレージサービスは他にもあるしであまりメリットではない。
エキスパートサービス2回ってのも、サポートに電話しなければわからないようなトラブルってあんまりないし、機能制限のないクラウドサービスについては詳細情報がわからないのでなんとも言えない(多分ADPSとかの絡みでそっちのサービスじゃないかと思うんだけど…)


多分このグループ版の一番のメリットは「請求と管理配布の一元化」ではないかと思う。

Creative CloudAdobe ID にひもづけられるので、個人のIDに対して発行されるものになる。
しかし、企業などで作業者のIDに対してCCを登録すると、作業者が退職した時などに困る事になる(そもそも、作業者が固定されていない場合などもあるし)
グループ版では、このCCライセンスの追加や削除といった管理を一括で行う事ができる。多分これがグループ版一番のメリット。


…。


ただなぁ…。


Creative Cloudが個人のIDに紐づけられる、というのは確かなんだけど、個人版のとこでも書いたように、Adobe IDってのは一人で複数持つ事ができるんだよね…。
例えば中小規模の会社で、CCの台数はそんなに無い時、管理者である人が、複数のメールアドレスを使ってAdobe IDを登録し、CC個人版を台数分契約する、これって別に違反じゃないような気がするのよね。
Adobe IDを管理するのが一人なら、作業者の退職とか追加でも困らないし、メールアドレスについてはフリーアドレスを使うなり、会社でそれ用のアドレスを発行するなり方法があるだろう。そりゃ大規模な台数だと大変だけど、中小規模であれば十分これで管理できる気がする。

個人版はグループ版より2,000円も安い。業務用途が限られていて、フル機能の個人版でなく単体サブスクリプションで1本あるいは2本のアプリケーションでいいのであれば、もっともっと安くつく。
塵も積もれば…で、この差額って年額に計算すると結構な額になるとおもうのよね…。

まぁ私は自分ではCCを契約したことないから、やってみたらこのやり方とてつもなくメンドクサイとかなにか障害があるのかもしれないけど。
でも少なくとも、現状のグループ版にそこまでのメリットを感じられないのは確か。



Adobeとしては精一杯譲歩してんだとおもうよ


今回Creative Cloudのみ、他の販売方法は廃止という決定にあたってAdobe

過去バージョン(CS6以降)の継続利用可能
単体のみの利用(単体サブスクリプション)プランの提供
CLP/TLPでのライセンス提供は継続(CS6以前の過去バージョンの継続)

という最大限の譲歩をしている(というか、過去バージョンの扱いなどは譲歩しないとさすがに無理だとこの一年のテスト販売で諦めたんだろうな)
単体サブスクリプションプランなんかはできると思わなかったので意外な驚き。
CS6以前のバージョンについては現状のCLP/TLPでのライセンス提供を継続するということなので、少なくともある程度の規模の企業ユーザーは現在使っている過去バージョンについては当面の間使い続けていける。

さらにこれでもカバーできない顧客(ただし大口に限る)についてはエンタープライズプランというカスタマイズプランでケア。
これでほとんどの(少なくともAdobeが気にする大口の)ユーザーがCC導入のハードルとしていた部分は解消されたと思う。

ここまで譲歩してんだから、さっさと移行しやがれってのがAdobeの言い分でしょうな。

とりあえず、今まで文句いってた過去バージョン使いたいとか全部要らねー必要な分だけよこせとかそういう要望に対応したのは良かったと思う。
正直、どのプランも料金設定がやや高いとは感じるんだけど(いま初回特別割引とかっていって設定している月3,000円って値段ぐらいが相応じゃないかと思う)これはAdobeもCCに移行するユーザーがどのぐらいになるか分からない以上、ちょっと高めに設定せざるを得ないんだろう。

今すぐに大半のユーザーがCCへってのはないかもしれないけど、それでも今後じわじわと移行していくことになるだろう。



なんてったって、私たちには他に選択肢がなくなってしまったからね!