ちくちく日記

DTP系備忘録。真面目にやってます。

インキ総量

マイミクのちー坊さんが、先日の日記からインク総量についてとりあげられておられるので、私も気になって調べてみました。

mixiの日記です)
「インク限定300%以下の悪夢」
「A Q U E N T CS3 Event 28-30 November」


印刷会社勤務ですが、私の担当は製版(DTP)業務のとこで、刷版には詳しくありません。自分の不勉強を反省しつつ、刷版の部署に問い合わせしてみました。

ちなみに私のいる製版部門のところでは、入稿されたデータのインク総量のチェックはしてません。CMYKのデータでインク総量が400%近くあってもそのまま刷版にまわしてます。私は(なんとなく)刷版側でなにか処理をして、350%以下に押さえるとかしてるのかなーと考えていたのですが…

「インキ総量が400%近いデータとか、そちらで処理をして、下げてるの?」
刷版「そんなことしてない。来たデータはそのまま刷っている」
「刷りにくくない?」
刷版「刷りにくいよ。裏写りするし、乾きが遅いからすぐ重ねるとくっついてしまう。刷った部分も色浮きする」
「問題にならないの?」
刷版「問題になるほど、そういうデータは多くないから。多かったらなにか対策を考えるけど、たまーにしかないから、無理矢理刷ってしまう。それに今は速乾性のインキも開発されてるし」
「実際、どのくらいの%が印刷としては限界値?」
刷版「紙によるから一概にはいえないな。250%ぐらいで限界の紙もあるし。でもまぁ350%ぐらいまでじゃないかな」

と、いう事で、印刷会社でも結構テキトーに刷っているのでした。
ただ、うちはそんなに問題になってないからテキトーなのであって、扱っている印刷物の種類によっては(たとえば新聞とか)もっとシビアにデータ管理しているだろうと思う。

そもそも、普通にデータを作成していれば、問題のあるデータを作る方が難しい。
インク総量が400%近いデータを作るというのは、方法としては

A)オブジェクトに(故意に)それに近い数値を設定する
B)CMYKの掛け合わせが400%近くなるように画像(写真)データを撮影し、変換する

しかないわけだけど、A)については、まぁ論外というか、時々いるレジストレーションカラーをつかって、オブジェクト塗っちゃうような困ったチャンぐらいしかありえない。

問題になりそうなB)の場合でも、例えば夜景の写真を撮影し、RGB→CMYKの変換をかけたとしても、Photoshopに標準で入っているプロファイルを使用して変換すれば、240〜350の間で収まるはず。
ちなみに日本の印刷用プロファイルとして標準でセットされている、JapanColor2001Coatedは総量350%、JapanColor2001Uncoatedは310%、JapanColor2002Newspaperは240%に設定されている。(今回気になったので、他のプロファイルのインキ総量も調べてみた。どこかにまとめて資料として載ってないかなと思ったのだけど、見つけられなかったので、地道に一つ一つファイルを変換してみるという手作業で(笑))

プロファイルを使わずにカスタムCMYK変換をした場合でも、インキの総使用量の値はデフォルトでは300%になっているから、あえていじらない限り、400%近い数値になることはない。

日本の(コート系用紙の)標準とされているJapanColor2001Coatedの350%という値については「標準(どこの印刷でも刷れる)」というより「高品質(掛け合わせの部分の再現を最大限だして刷れる限界)」を目的とした数値なので、実際にこの数値で刷るのはきつい場合もありそう。日本は印刷技術が優れている(というか印刷品質にうるさい人が多い)ので、この数値ぐらいで刷れるけど、欧米では300%前後にするのが一般的だともいうし。

ちー坊さんの日記では、300%の画像が必要なところ、360%でデータを作ってしまい、修正の為のコストがかかってしまったらしい。
360%なんてどうやって作ったんだろう…と思ったらある出版社の設定をそのまま使ったら360%になった(これはその出版社がプロファイルを配布しているという事かな?)との事。
360%というのは結構挑戦的な数値だと思うのだけど、もしかしたらなにか特殊な印刷用途(インクののりやすい紙に刷ってボリューム感をだしたいとか…)なのか。

Photoshopにはじめからついているプロファイルでの変換ならまず問題は起きないけど、配布されているプロファイルなんかを使って色変換する場合には、そのプロファイルのインク総量設定にも注意が必要かも。