RIP爆弾の作り方
以前の日記で、
「あまりにもミクロなパターン過ぎてRIPがかからないデータ」
というのを紹介したのですが、今回はその第二弾(笑)
あらかじめ言っときますが、よゐこはまねしちゃいけません!
オペレータからSOS。
「RIPかけると画像が抜けちゃうんです」
どれどれ…と問題のデータをみる。
よくある健康食品の宣伝ちらしで、A4に商品写真が10点ほど。
写真はそれぞれ円形にトリミングし、周りをぼかしてある。
画像ファイル自体に問題はなさそうだし、リンク切れでもないし…。
たったこれだけのデータなのに、なんでちゃんと出力できないの…?
と、ファイルを確認すると…なんだか変。
たかだかA4のペラチラシなのに、ファイル容量が…1.96GBもある…!
なんだこりゃ?そもそもこのデータどうやって入稿してきたんだ…??
オペレータに確認すると
「入稿の時は、IllustratorCSのネイティブデータで入稿されてきたんです。その時はそんなに容量も大きくなかったんだけど、EPSに保存しなおしたら、なんだかすごく容量が増えて…」
EPSに保存しなおしたら、容量がすごく増えた…?これでピンときて、もう一度データを確認。
あやしいのは、ぼかしてある画像あたり。
商品を丸くぼかしたその画像、リンクされている画像自体は角版の物。画像を配置したあと、Illustrator上で画像にマスクを作成し、丸形に切り抜いてある。じゃ、このぼかしはどうやって作ってるんだ…?
よくみると、丸形のマスクの内側に、もう一回り小さい円が…。選択してみると、マスクの上に添うように、ドーナツ型のオブジェクトがおかれている。ドーナツは、円の中心から外側にかけてだんだんに透明→白のグラデーションになっている。
つまり、この白い部分が画像のふちを隠し、ぼかしたような効果になっている訳だ。
「なんじゃこりゃ…?」
一体どういう作り方をしたのか、しばし考える。
ドーナツ型に内側が抜けているから複合パスかと思ったけど、複合パスじゃ、この透明から白へのグラデーションは作れない。
透明から白へのグラデーション…?あ!ブレンドか!
わかってみると、答えは簡単。
塗りC0M0Y0K0の円を一つかきます。
その内側に、同じ塗りでやや小さい円を作り、透明度を0%にします。
この二つの円をブレンドツールでブレンドすれば…透明から白になるドーナツのできあがり〜!
いやいやいや…、いろいろ考えるもんですな〜〜〜。
ちょっと感心しちゃったよ…。
でも、今回のトラブルの原因がこのドーナツにあることは明らか。
ブレンドツールで作成されたオブジェクトは、出力時にはそのステップ数と同じ数のオブジェクトに分割される。
ステップ数が256なら256個のパスオブジェクトができる。ステップ数が多ければ多いほど、オブジェクトが増えるわけで、昔のRIPだとあまりにステップ数が多いと処理できなかったすることもあったけど、今のRIPは処理能力もあがってるから多少パスオブジェクトが多くても処理できないというような事はない。(…といっても程度問題で、ミクロなパターンなんか作られるとやっぱり処理できないけど…ま、それは別の話)
問題のドーナツのステップ数は50。これだけなら余裕で出力できる数だ。ただしこのドーナツには透明効果が使われている。
透明効果は透明から白のグラデーションで、下にある配置画像を隠しぼかし効果となっている。
この部分はEPSへの保存時に、分割/統合処理されるはず…
丁寧に説明していると、話が長くなるので、簡潔にまとめると
EPS形式に保存する際、透明部分(画像ぼかし)の分割/統合が行われる
↓
まず、ブレントツールで作ったグラデーションが50個のパスオブジェクトに分割され
↓
透明から白へのグラデーション(ステップというべきか?)を表現するために
ステップごとの濃度(50個)の画像が作成され
↓
50個の濃度の違う画像を重ねた状態で、それぞれ必要な部分のみを50個のパスオブジェクトでマスクして表示
…というデータに変換されていたわけだ。
写真は10点程あったので、都合500点の画像ファイルが貼ってあるような状態になってしまった、と。
そりゃ、重いよな〜。
RIPをかけると画像が抜ける…というのも、あまりのデータの重さにRIP処理が追いつかなくなってしまったらしい。
デザイナーさんとか、実際の出力をした事がない人はとかく見た目でデータを作りがち。加えて、自分の知っているツールだけで完結しようとするので、こんなデータを作っちゃうんだな。
透明効果が絡んだデータは出力結果の予想がしにくいんだろうけど、でも今回みたいにEPSにしたら馬鹿みたいなサイズに膨れ上がるなんてのはおかしいって気がついてほしい。
ま、おかしいって思ったから、EPS入稿じゃなくて、ネイティブ形式のまま入稿してきたんだろうけど…(苦笑)
このデータ、作り方をちょっと変えるだけで、問題なく出力できるデータになり、無事に下版となりました。