ちくちく日記

DTP系備忘録。真面目にやってます。

スクリーントレンドセミナー2009夏-技術セッション-

スクリーンのトレンドセミナーにいってきましたー。
とりあえず技術セッションのレポートから。

さて、スクリーンのトレンドセミナーといえば、技術セッション。
Trueflowの技術者が、出力技術情報を解説するという、マニアのマニアによるマニアの為の技術解説セミナー。
解説される情報は大変有益ながら、ここまで詳しく知っていてもきっと実務で使う事はないよね…というものすごい隙間をついてくださるセミナーです。
でも、評判いいんだろうなー、だってこのセミナー毎回ほぼ満員だもの。

さてそんなマニアセミナーの詳細レポート。

TrueflowがAdobe PDF Print Engine に対応したのはTrueflow SEをリリースした2年前
2年前といっても、当初は「APPE始めました」といった感じで、まぁAPPEは載っている事に意義がある…的なポジションというかそういう感じだった。

TrueflowのAPPE対応が実用段階に入ってきたなーと感じたのは、OutlinePDF-Advanceが搭載されたTrueflow SEv6.0がリリースされた頃。ちょうど1年前くらい。

実際にPDF運用への問い合わせ、実運用は増えていて、スクリーンはこの2年間で、APPEを使った出力実績、トラブルノウハウを積み重ねてきたらしく

“---Trueflowはこの2年間で多くのことを学びました…!”


と。な、なんかスポコン物みたいです!

今回のセミナーは、この2年間でTrueflowがどう進化したのか、そして今後どう進化していくのかというのがテーマでした。
まず、PDFワークフローで、きちんと印刷できるためにどうするべきか。


(1) データ作成方法を進化

まずは、データの作成方法を変える事から。
PDFワークフローを成功させるには、まずデータを正しく作る必要がある。

この場合の正しく、というのは古いDTP環境での正しい作り方ではなくて、新しいアプリケーションをつかった新しい作り方の事。
データを正しく作る為の情報共有としてスクリーンはTrueflow出力の手引きという形で、出力ノウハウをまとめた情報を公開している。かなりのダウンロード数なのだそうな。

また、出力の手引きWebでは随時出力に関する最新情報、トラブルノウハウなんかをアップしている。

個人的にはこの出力の手引きWebでは、情報の合間にこっそりグレーの文字で書かれた部分が、かなりツボ(笑)

▲この記事なんかでは、Illustratorの警告ダイアログにつっこみ(笑)“しかも意味がわからない”って(笑)

RSS購読もできます。ぜひ購読してくださいとの事でした。中の人のつっこみがだんだん増えてるような気がするので購読しとくと楽しいかもしれん。

あと、誰もが正しい出力設定で出力できるように、Trueflow印刷ユーティリティも配布してる。

印刷設定ユーティリティは、Trueflowでの出力に最適化されたPDFやPSを書き出すための設定なので、例えばトラブル検証などで、データをスクリーンに送って検証してもらうときでも、この設定を使って作られたPDFやPSなら、どういう風に作られたデータなのかすぐにわかるので、話がはやいんだそうな。
Trueflowの出力に最適化と書いたけど、この設定自体は「出力データ作成用」としては大変素性がよろしいので、Trueflowを使っていない人でも、利用するといいと思う。ただし、トンボがつかないとか、PDFで画像が圧縮されないなどの特徴はあるので、その辺は任意カスタマイズする必要があるけど。
自社で出力設定つくるのがめんどくさいんだけど、お客様に「出力用PDFの作り方を教えて」とか言われてあーっっってなってる印刷会社とか、これ使うといいと思うよ、アプリケーションのバージョンアップにもこまめに対応してくれるし(笑)

こういったすべての情報をスクリーンはWebで公開している。顧客だけに公開といった制限をつけず、すべての人に公開しているのはそれだけ広く情報や知識を広めたいという気持ちからだそうです。そういうところは大いに評価できると思う。
今回セミナー会場で配られたアンケートにも、Trueflow出力の手引きや手引きWebについてどう思いますか、みたいな項目があった。これらの情報の公開についてはスクリーンの中でもその評価を気にしているのかなと。
これだけやっても、反応が薄いとさみしいだろうし、今後「手間ばっかりかかるのに反応がないんじゃ、やめてまえー」という方向にもなりかねないので、アンケートには「すごく参考にしています。今後も期待しとります」と書いておいた。


(2) Trueflowを進化

データの作成方法を進化させると同時に、Trueflowでの処理方法も進化させている。

APPEでトラブルがあった場合、APPE自体は修正できないものらしい。
(APPEってのは、Adobeが出してるAPPEをそのまま使うもので、それ自体をいじったりはできないもの…らしい)
なので、データ出力にトラブルがあったとき、スクリーンはどうしているのかというと

入力処理→APPE→出力処理

この、入力処理の部分でがんばってAPPEに渡す前のデータを解析、修正、調整をかけてエラーを回避できるようにしているのだそうな。
つまりこの入力処理の部分にもてるPDF出力のノウハウというか技術をつぎ込んでるということですね。

入力処理でがんばってエラーを回避している例として

その1

APPEは透明効果をそのまま処理できるRIPなのだけれど、それでもあまりにも複雑な透明領域が大量にあるデータだと処理しきれずメモリ不足でエラーになってしまうことがあった。


これは、必要のない透明をできるだけ使わないようにする事(つまりデータの作り方の工夫)である程度回避できるのだけど、データの作り方を工夫しても、どうしてもエラーになってしまう場合(必要な透明が多数含まれていて、それ以上減らせない場合)は、事前にデータを透明分割統合して処理するしかないというAPPEとしては屈辱的な回避策しかなかった

そこでスクリーンはがんばって、このエラーを回避できるパッチをリリース
Error during transparency atomic region processingってエラーに悩まされている人は、ご利用ください。

その2

ドロップシャドウのかかったデータから書き出されたPDFで色味がかわってしまう問題

これ、前のトレンドセミナーでも説明してたトラブルですね。

透明の変換用カラースペース設定が間違っている状態でPDFを作成すると、色の差が目立つ結果になります。
前回はこれをAcrobatを使って手動で調整するというやり方を説明してましたが、これもがんばって、RIP側で自動調整するパッチをリリースしました。


このように、TrueflowはRIP内部の処理を進化させることによって、データ出力トラブルに対応している

ただし、RIP側で対応してくれるからといって、正しくデータを作る事が重要であることには変わりない。
Trueflowで修正するからといっても、あまりに複雑なデータの場合は修正しきれない事もある。
また、RGBワークフローじゃないからと、カラー設定等をおろそかにする人もいるけど、CMYKワークフローであってもカラー変換設定が影響を与えることがあるので、正しく設定してほしい。
RIPががんばってるからっていって、データ作成をおろそかにしちゃだめですよー


(3) DTPベンダと連携

DTPベンダとも連携してやってます。
アプリケーションの絡む不具合について、Adobe社と情報を共有し、解決できていない問題については、両社で発生条件と回避策を公表してます。

たとえば、

InDesignで設定した「効果」がPDFで抜けてしまう問題について』
スクリーンが公開
Adobeが公開
とか

『合成フォントが、環境によって違う出力になる問題について』
スクリーンが公開
Adobeが公開
とか

どちらも、Adobeとスクリーンで同じ情報を公開しています。
いずれもまだ解決できていない問題ですが、トラブル情報はその情報を知っている事で回避できる。まず情報があるという事が大事と考え、トラブル発生条件と回避策を公開しています。
もちろんメーカーとして、不具合解消に向け対策を検討中です。


それもこれも、データを正しく出力するため、RIPは刷れてナンボの世界だからです!(この表現すきだよね…)


つぎにPDFに関する情報について

まずPDF/X-4の説明。
PDF/X-4は印刷用PDFの規格。
PDF/X-4から、「透明」が許可され、レイヤーがつくようになった。

これによって、透明効果をRIPで処理することができ、品質の向上が期待できる。また本格的なRGB運用も可能となった。

透明を保持するためには、アプリケーションから直接(透明の分割統合せず)PDFを作成する必要がある。
EPSファイルは不可。PostScritpは透明を保持できないので。ネイティブファイル形式で運用しましょう。

RGBワークフローではICCプロファイルの保持が必要。これもEPSでは含まれないので、JPEGPhotoshopネイティブデータでの運用になる。

PDFワークフローへの移行が進み、PostScriptの出てこないワークフローへとかわりつつある。

この辺りは、いままでのトレンドセミナーでも何度も説明された部分なので、今回は軽めの説明。

今回の本題はここから。まだ認定されていない規格「PDF/VT」について

PDF/VTとは、バリアブル印刷用の国際規格
VTは「Variable Transactional」の略
この規格はまだ制定中であり、正式決定されたものではない。

バリアブル印刷とは、印刷物の一部が変更されつつ印刷する印刷のこと。
バリアブル印刷に利用するデータには、再利用される(繰り返し印刷される)オブジェクトと可変(差し替えられる)のオブジェクトが存在する。オブジェクトを差し替えつつ印刷する、ということは、通常より高速なRIP処理が求められるという事。

つまり、1万パターンの差し替え印刷があったとして、それを1万パターン全部1からRIPしてたら時間がかかってしょうがないから、いかに高速にRIPできるか、再利用するオブジェクトと、1回きりのオブジェクトとをうまく処理する為の規格です。

バリアブル印刷の例として、最近では卒業アルバムなどをバリアブルにする、という例があげられてました。我が子ばっかりが写っている卒業アルバム、などだそうです。なるほど。


PDF/VTはISO 16612-1 (PPML/VDX)を元に制定されている。
ISO 16612-1 はPDFを基本として作られた規格なのだけど、ツール対応がいまいちで、あまり普及しなかったし、透明にも対応してなかった。
その反省を基に、新たに制定されつつあるのがISO 16612-2のPDF/VT。
PDF/X-4、X-5をベースにしているので、既存のワークフローでもPDF/VTを処理することはできる。ただし、PDF/VTのメリットを活かすためには、専用のワークフローが必要になる。

さて、そのPDF/VTの特徴。

まず、どのようにして効率の良いバリアブル印刷に対応しているのか。

PDFにはXObjectという概念がある。
XObjectとは外部オブジェクトという考え方。
PDF内で使われる部品を分割して記述してある。
PDF/VTではそのXObjectを有効につかって高速化に役立てようとしている。


XObjectには3種類ある

・Image XObject 画像専用のXObject
・Form XObject 画像以外の通常のオブジェクトの記述
・PostScript XObject これはもう使われていないオブジェクトなので気にしなくていい。

んで、XObject=外部オブジェクト概念なのだけど、つまり、いままでのPDFだとPDFの中のオブジェクトを表示するのに、普通はコンテンツをひとつひとつ全部なめて表示していた。んで、これをXObjectでやると、オブジェクトは画像と画像以外に分けられて、それぞれXObjectとして記述し、それにたいしてDo~って感じで「これを表示しなさい」って命令するだけで表示することができる。

つまり繰り返しでてくるオブジェクトを何回も何回もなめ直さなくていいってことかな。だから効率がいい。

さらにPDF/VTでは外部オブジェクトの参照が許可されている。
参照XObject(Reference XObject)っていって、これはPDF/X-5から許可されている。
(PDFの構造としてはPDF/X-5以前からあったものだけど、PDF/X-4までの規格では許可されてなかった)
外部オブジェクトの参照は、印刷関係の人ならOPIみたいなものだと思えば理解しやすい。つまり、フォームの中から、外部のPDFファイルをファイル名によって参照して読み込むことができる。

外部オブジェクトの参照はAcrobatでは9からサポートされている。
ファイル名による参照のみ、つまりパスではないので、参照させる場所を設定する必要がある。Acrobat9では環境設定→ページ表示→参照XObject表示モードというのがその設定になる。

XObjectは、PDF/VTのみではなく、既存のPDF内でも普通につかわれているらしく、トラブル事例紹介で紹介された、合成フォントの例の文字の透明効果の処理においても、1文字ずつで背景画像をクリップする部分の背景画像の繰り返し処理などに利用されてるそう


PDF/VTの特徴、もう一つ。

階層構造のDPartによる、ページ選択、順序変更。

従来のPDFではページ順による印刷しかなかったがPDF/VTでは、属性順(たとえば、郵便番号、氏名、住所などのキーによるソート)での印刷指定が可能。
これは、DPartという階層構造の属性データベースをPDF内部に持たせる事で、ソートが可能になっている。


PDF/VTにはいくつかのバリエーションも用意されている

PDF/VT-1はPDF/X-4がベースで1ファイルで完結する(外部参照しない)が、PDF/VT-2は、PDF/X-4p、PDF/X-5g、PDF/X-5pgがベース。
pはICCプロファイル、gはグラフィックの外部参照をそれぞれ指す。外部参照することで、1ファイルでは完結しないPDFとなった。
さらにPDF/VT-2sではストリーミングに対応。データを送信しながら出力できる。
バリアブル印刷では、可変が多ければ多いほど、出力データが大量になるので、その対処として送りながら処理する事のできる仕組み。

これらPDF/VTの規格はいずれもまだドラフトレベルであり、実際にどこまでが規格として確定されるかは未定。

バリアブル印刷風のデモとして、InDesignのデータ結合パレットを使った流し込みデモをやっていました。
InDesignのデータ結合パレットでバリアブルができるよ!というデモではなくあくまでイメージということですが。

InDesignのデータ結合パレット、CS4からは結合後にドキュメントじゃなくて、直接PDFを書き出せるんですね。ドキュメントを作らなくてよいというのは、不必要なデータを作らなくていいので、よろしい。
ただし、個人的にはInDesignのデータ結合パレットは、もうちょっと進化するべきだと思う。せめて文字の長体処理ぐらいはオプションでできるようにしないと使い物にならない。

さて、最後にTrueflow v7について。

Trueflow v7。9月末〜10月に発売予定。
演算系の進化として、drupa2008で発表された、Adobe PDF Print Engine2に対応。
APPE2、大きな特徴はバリアブル印刷を想定したエンジンであるという事。PDF/VTに対応してます。

Trueflow v7ではこのAPPE2対応、エンジンのバージョンアップというのが大きなトピックではあり、新機能搭載!とリリース時に大々的にうたわれる部分であるのだけど、それと同時に、メジャーバージョンアップというのは、RIPの不具合修正をするチャンスでもある。バグ修正をバージョンアップでするなというけれども、不具合に対する小手先ではない抜本的な対策を行える機会であり、今回もそういった修正がなされている。
それと同時に、従来からの互換性というのも非常に大事!Trueflow v7のリリースにあたっては、プレリリースから1年半この互換性維持に費やしたといってもいい。

具体的には、抜本的な不具合修正として
・グラデーション、ストロークなどの品質向上
・安定性の向上、アーキテクチャに依存する部分の問題修正
・出力できなかったものを出力可能にする対応(メモリ管理などの見直し)
・パフォーマンスの向上(ちょっっとだけ出力早くなったらしい。だけど期待しちゃだめで(笑)ちょっとだけだそうな)
が行われている。

そして、なによりも力をいれたのは互換性の部分だそうで、デグレード=0を目指してがんばりました!と。
デグレードっていうのは、バージョンアップによって従来できてたことができなくなる事。これが0になるように。つまり従来のTrueflowでできていたことが、バージョンアップによってできなくなることのないように、従来の出力品質を保証したアップデートをがんばりました!

APPE2搭載っていうのは、実は他のメーカーですでに搭載しているRIPもあり、Trueflowは若干遅れを取っているのだけど、そのかわりTrueflowは他メーカーではできていないデグレード0を目指した。と言う事のようです。

印刷は刷れてナンボですから!(ほんっっとにこの表現すきですよね…!)


と、今回も力強く技術セッションは終了したのでした。

今回の目玉はPDF/VTの話かな。
バリアブル印刷っていうのは今どのメーカーさんも「これからはバリアブルっす!」と鼻息荒くすすめている部分ではある。
でも、実際そうはいってもバリアブルにできる業務ってなかなかないし、あったとしても品質的な部分でいろいろ障害があったりと難しいんだよね。

ただ、品質的な部分というのは、出力機やRIPの進化によってカバーされていくだろうから、あとはバリアブルをうまくつかった業務が創りだせるかになるか。そこが一番難しいのだけど。