東京国際ブックフェア、電子出版エクスポに行ってきました!
……はい、いつの話だよ!って突っ込まれると思います。
えーと、行ったのは7月6日です!一月前です!でもこのブログ備忘録なんで!速報サイトじゃないんで!
(って、去年も電子出版エクスポレポートで同じ言い訳をしてる。進歩ねぇ。)
…ってことで感想を。
人が多かったー
いつもこういう日程だったかどうか覚えてないけど、今年のブックフェア、7月5日から8日の4日間。で、同時開催の電子出版エクスポ7月4日から6日の3日間。ブックフェアと電子出版エクスポ両方に行ける日は5,6日の2日間しかない。しかも6日は金曜日。
…ってことで、ものすごい人でしたよ!
私のお目当ては電子出版エクスポの方でしたが、最終日ということもあり、もう人いっぱいで、人気のブースなんかぎゅうぎゅう!説明なんてきけない!
人ごみをかいくぐりながら、なんとか見て回りましたよ。
デバイス系
ブックリーダー的なデバイス系を展示してたのは3社
kobo、もう発売されていい感じに炎上しちゃってますけど…。
このときはまだ発売前でしたので、ものすごい人だかりでした。
サイズや重さはいい感じ。
▲文庫本ぐらいのサイズ
ただ、電子ペーパー系特有の、画面表示の切り換え時に残像が残る感じはちょっとなー。個人的にはあまり欲しいと思えなかった。
まぁ炎上の大部分はシステム的な不備のようなので、今後のアップデートをがんばれとしか。
楽天、去年はパナソニックがでかくて重い専用端末出してたんだよな…あれどうなっちゃったんだろう…。
東芝 BookPlace
東芝のBookPlaceはLED液晶のブックリーダー。
▲カラー表示がきれい
▲大きさ、手とボールペンの太さに比べてもこれぐらい。
画面きれいだし、動きもスムーズで好印象。
凸版印刷 BookLive!リーダー
凸版印刷がメイン出資でやってるトータル電子書籍サービスBookLive!からも端末の展示が。BookLive!が開発して販売する専用端末になるらしい。(BookLive!自体は専用端末以外でも利用できる)
ただし、まだ参考出品として寿司屋のショーケースみたいなのに入ってて、触れない。意味ない。
▲おさわり厳禁…。
電子ペーパー系端末ということなので、表示としてはkoboやsonyのReaderに近いものかもしれない。
日経かどっかから「10月に7,000円程度で発売!」みたいな飛ばし記事がでたって聞いたけど、7月のこの時点で手にとれないぐらいだから、10月発売はないんじゃないの…
FUJITSU
去年FUJITSUも電子ペーパー系の端末だしてて、それが軽くていいなーと思ってたんだけど今年はなかった…。参考出品だったから、今年はもうやめちゃったのか…
フォント関連
フォント関連、去年はなぜか写研が「フォント解放の試み」とやらを発表してすべての話題をかっさらっていってたのですが、一年後の今まったく話題がないのはなんなんだと思ってたらどうやら「今フォントのギザをとっているところ」らしい。ギザってのはフォントデータのゆがみとかびびりとかそういうのらしい。去年あんだけでかでかと発表したのに、いまだにのんびりそんなことをやってるらしい写研…相変わらず、時間の流れが昭和のままの会社です。
ダイナフォント
電子書籍使用の為のフォントライセンス、ってのを発表してました。
画像、動画、文字表示のためのライセンスで、デバイスへのフォントデータそのものの組み込みはライセンス外。別途相談らしい。
フォントワークス
電子書籍まわりでのフォントの使用許諾については、フォントワークスも使用許諾範囲を記した紙を配布してた。問い合わせ多いみたいね。
ちなみにフォントワークスでもデバイスへのフォントデータの組み込みは別途相談。
パスポートに中国語フォント追加。
ライセンスプログラムでの中国語フォント提供は、一足先にフォントワークスもやってたのだけど、モリサワも追随した形。
ちなみに提供メーカーはARPHICと漢儀の2社。ARPHICはフォントワークスにも中国語フォントを提供しているメーカーで多分同じフォントが提供されるはずだけど、今回モリサワに提供されるのものと互換性があるかどうかはよくわからない。フォントワークスの説明の方に聞いたところだと、フォントワークスとしてはARPHICからフォント提供を受けているだけで、その中身についてはタッチしていないため、今度モリサワに提供されるものがまったく同じかどうかはわからないらしい。
凸版明朝のリニューアル発表
文字クラスタの間でひそかに話題になってた、凸版明朝リニューアル。
凸版明朝といっても、一般の人にはまったくなじみのない名前だと思うけど、これは凸版印刷が自社で開発し、自社で制作している印刷物にのみ使用している書体。
市販されているものではないので、名前は知られていないが、例えば文芸春秋の本文組などに使用されており、目にする機会は多い。
▲展示されてた文芸春秋。凸版明朝が使用されている。
同じように印刷会社が内部開発して持っている書体としては、大日本印刷の秀英体がある。こちらもハウスフォントであるが、うまくブランド化し、パスポートなどに提供されているので知っている人も多い。それに比べると凸版明朝は知名度はいまひとつ。
で、この凸版明朝がリニューアル。
「マルチデバイスフォントをめざし、字母からリニューアル」
▲ひっそりとリニューアル宣言
マルチデバイスフォントってのがいまいちよくわからないけど、多分電子書籍端末に載せるのに最適化されたフォントとかその辺りを狙うつもりか。
BookLive!の端末にも載ってるのかなーと思ったけど、まだ違うっぽい…
▲ピンぼけしちゃってよくわからんが、少なくとも明朝体ではないよな…
字母からリニューアルということなので、さっきの写研の話じゃないけど、多分古くからあるゆがみとか、ギザとかそういうのを調整するのだろう。
個人的にはリニューアルついでに「凸版明朝」って名前も変えたらどうかと思う。もっとフォント名で文字のイメージがわかるような名前に。「凸版明朝」ってたんなる会社名だからなー(それを言ったら秀英体も会社名なんだけど、こちらは社名のほうが変わってるから…)
他、各社ブースで気になった物など
モリサワの電子書籍への取り組みは一貫して「文字組にこだわる」という姿勢が見えて、好印象。組版エンジンもかなり評判がよくて、電子書籍アプリの中で一番よい組版という評判。
ただ、どうしてもその組版再現の為にプラットフォームが限られるというか、独自ソフトになってしまい、市場がせまくなる…という辺りが泣き所だったんだけど…
MCBookがEPUB対応強化、Kindle向けmobi書き出し対応
EPUB3、mobi といった、スタンダードフォーマットへの対応。でもこれってせっかくの長所であった文字組のよさが失われちゃうんじゃないの…?と心配するところ…
MCBook EPUB ビューワーライブラリ提供
MCBook の日本語組版品質をEPUBで再現するための、ライブラリの提供開始。
アプリやコンテンツに組み込むことでMCBookの組版が再現できるんだそうな。
これ、モリサワがんばってるなぁー。今後の流れとしてはどうしてもEPUB3などのスタンダードフォーマットやmobiみたいな大手フォーマットが主流になりそうで、そこでいくら「組版品質がいいんです」って独自ソフトを展開してても使ってもらえない。それならその良い部分を切り売りするってことかな。
ユーザーとしてはモリサワのこだわる組版を他のリーダーでも再現できるならよろこばしい。
MCComic
固定レイアウトのEPUBファイルでコミック、写真集などを制作するツール、およびビューワー。なんだけど…これもしかして単なる画像をEPUBでまとめただけ…なのかな?(なんせブースが混んでいて説明きけなかったから…)
Fixed Layot EPUBっていま規格が検討されている最中で、その中で単に画像型のレイアウトではないリフローや自動レイアウト選択的なものも含めた規格になりそうな気配。
だとすると、ビューワー側の方にそういったリフローや自動画像選択的な機能が必要になってくる。その辺りはどうなんだろう。まだ参考出品で秋にリリースという事だけど、固定レイアウトEPUBの規格が固まりそうなのが年末ぐらいだよね…たしか。その辺はアップデートしていくってことかな。
ちなみにこの「MCComic ビューワーライブラリ」も組み込み用エンジンとして提供するもよう。
あとは
MCMagazineがnewsstand対応
newsstand、あんまり日本では使われてないような気がするけど…対応して欲しいって声があったのかなぁ…
GT-Layout
画像の中の文字を再構成し、リフローさせて読める…ってなにかと思ったら、つまりスキャンして1文字1文字の状態にした画像をならべて、リフロー型文書に作り替えてみせる…ということだった。ち、力技だな、おい…。
1文字1文字の判断というか、その画像が文字が図形かという判別にはOCRをつかっているみたいだけど、判別した後はそのまま画像を並べる。
展示機では、チラシのようなものを処理して、各文字部分を別表示させるような形を見せてた。文字部分をタップすると、そこの文字組が見える感じ。文字が画像なんだけどリフローする。
▲展示機。文字部分をタップするとポップアップして読める
GT-MangaAuthor、GT-MangaViewerEngine
漫画を取り込んで、コマで分解して見せるというソフト。漫画用の固定EPUBについては、富士フィルムはIDPFでレンディションマッピング方法について提案したりしているのでその関連…かな。
ボイジャー BinB
B in B(Books in Browsers)ということで、専用リーダーアプリではなく、ブラウザで読む電子書籍を提案。
確かに、専用端末とか専用リーダーアプリとかよりこういうブラウザプラグインっぽい方がユーザーは楽かもねぇ。
今年もでかいブースの大手2社
去年もそうだったけど、凸版印刷と大日本印刷はそれぞれ最大級のブース表示(とはいっても会場自体がせまいから、そこまでひろいー!という感じじゃないんだけど)
凸版印刷
凸版印刷ではブースの半分がBookLive!という電子書籍の総合サービス(コンテンツ販売、ビューワー、デバイス)の紹介にあててました。
コンテンツの制作、販売、デバイスやリーダーの開発から一手にやるということらしい。
「国内最大級のブックストア!」と言う事だけど、この「国内最大級!」っていう宣伝文句はこの日あちこちで見たな…。まぁ「最大!」は言えなくても「最大級!」は言えるもんな…
専用端末も販売予定だけど、これは先に書いたように、ショーケースの中で触れない状態。
ビューワー自体は一般のPCや、スマホ、タブレットなどで利用できるのでそちらが展示してあった。
…とりあえず、今のところ「凸版がやる!」って以外に特に特徴はないかなぁ…。専用デバイスの開発までやるってところがめずらしいけど。専用デバイスがでたらまた評価も変わるかも。
凸版は他にも大手らしく色々サービスの展示をしていたけど、まぁメインはBookLive!でしょう。
大日本印刷
こちらも電子書籍の総合サービスhontoを表で宣伝
タブレットやスマホなどの端末で新聞誌面をより読みやすく読めるようにするというビューア。
記事等のリンクを設定して読みやすくしている(この作業はDNP側で行う)
たしかビューア自体は無料で、収益としてはこのビューアをつかって新聞を読ませる新聞社側から受け取るとか(と言ってたような気がする…)
あとは去年も展示してたオープンン本棚。
各電子書籍ストアで買った本がまとめて一カ所で管理できる(ようになればいいな)という仕組み。
実際にはこの仕組みを実現するには、各ブックストアの協力を取り付けねばならず、なかなかむずかしい。去年見た時も「絵に描いた餅…」って感じたんだけど、消えずに今年も展示されてたので「去年からなにか進展があったんですか?」と聞いてみた。
とりあえず参加書店がひとつふたつ増えた…ぐらいらしい。で、現在使用者がどのぐらいいるかについては未公表だそうな。…まぁがんばれ…。
おまけ。こんなのもでてた。本を開いた状態でスキャニングできるブックスキャナー。
ドイツImage Access社が開発したものらしい。できるだけ本をいためないようにLED光源使用。
古書とかの電子化ってかなり需要があるので、こういうのも必要だよねー。
ということで、電子出版エクスポレポートでした。
去年は写研という、良くも悪くもインパクトのある展示があったのだけど、今年は特になぁ…。koboは発売直前で盛り上がってたけど。(そして発売後も違う意味で盛り上がっているけど)
相変わらず、電子書籍販売サービスは山ほどあって、まったく統合される感じはない。ユーザーにとっては使いづらい事この上ない状況。まぁこの後amazonが黒船でやってきたら、それなりに淘汰されるでしょう。
凸版がBookLive!で発売する専用デバイスがあんなモックアップじゃなくてちゃんと触れる状態だったら、多分もっと話題を集めたとおもうのだけど。あまりにも密やかに展示されてるもんだからBookLive!共々ほとんど話題になってなかった。まぁ展示機としてだしても、バグだらけとかフリーズしまくりとかだったら悪い方向に話題になっちゃうだろうしな。その辺りは出せない事情があったんだろうと推し量っておこう。