第18回東京国際ブックフェア(電子出版EXPO)にいってきました。
第18回東京国際ブックフェア(電子出版EXPO)にいってきました。
もう10日ぐらい前の話なので、いまさら記事を書くのもなぁと思いつつ、まぁ別に速報サイトやってるわけじゃないので、後から感想をアップしてもいいだろう。
と、いうわけで、ブックフェアにいってきました。と、いうか、ブックフェアと同時開催の電子出版EXPOの方がお目当てでそちらを見てきました。
とにかく、いろんなメーカーがいろんな立場でいろんなものを出してるという状態なので(ま、展示会なんてそんなものですが)全部くまなくみてきたとは言えないのですが、自分がみたなかの印象と感想を。
・ブックストア乱立しすぎ!
いや、もうどこいっても「電子書籍ストアサービス!」ってのを紹介される。
一体いくつあるのよ!?って感じ。
パピレス/RENTA!みたいな、古くからやってる大御所サービスもあるけど、ほとんどが「この度新規開業!」な感じ。「冷やし中華始めました☆」並みの手軽さ。
単純にコンテンツを集めて販売しますよってだけのとこもあれば、データをアップロードすれば変換、配信(課金)をやりますよってとこもある。
使うユーザー側からすると、こんなに乱立してちゃ、どこがいいのかもわからないし、自分の読みたいコンテンツがどこにあるのか探すだけで大変だとおもうのだけど。
あ、ブックストアを横断して検索ってサービスもいくつかあったな、そういうの使えってことかしら。
こんな風に国内にてんでばらばらにサービスが立ち上がって、結局ユーザーが使いづらくいまいち普及できずにいる間に、Apple、amazonあたりが黒船で襲来してすべてをかっさらってしまうんじゃなかろか
デバイスもいくつか出てました。
いいなーと思ったのはFUJITUが参考出品してた電子ペーパー。これすごく軽い。
私でも片手で軽々もてる。
画面の切り替えも、ページめくりギミックじゃなくて、なんていうか、スキャナやコピーのときに読み取りが走る、あんな感じ。
このぐらい軽ければ、女性でも持ちあるけるし、電車の中で片手で持って読める。これなら欲しいなー。
電子ペーパーはブリヂストンもだしていて、そちらもすごくよかったらしいのだけど、見逃してしまったorz…。
他にでていた、東芝のREGZA Tabletとか、NECのLifeTouchとかのデバイスが、どれもすごく重かったので、この軽さは好印象
デバイス系で、パナソニックが新しく端末をだしてたんだけど、これ楽天ブックストアと連携していて、楽天ブックスのみの対応…。
楽天専用機?そ、それでいいのかパナ!
説明員のお兄さんに「今後も楽天としか提携しないんですか?」と聞いたところ「(同じブースに)楽天さんがいらっしゃるので、あまり大きな声では言えませんが…いずれは他も、ということはあり得ます」と、今後の展開に含みを持たせてた。
そりゃそうだよな…。
そのデバイスの方は、重くて分厚くて、あんまりぱっとしなかったな。
▲サイズ比較できるもの置いてないけど、面積的にはA5より一回り大きかったような…
▲これはNECの。
デバイス系はどれもAndroid搭載!なんだけど、デモ機を触るとどうもみんな動作がもったりしてるというか、反応が鈍かったりで使いづらかった。REGZA Tabletとか触ってたらエラーで落ちちゃうし…。
Androidだから?このあたりは今後解消されるのかしら。
・なんでもやりますの大手2社
一番大きいブース面積をとっていたのは、凸版印刷と大日本印刷。大手二社ですな。
どちらも盛況で人がいっぱいでした。だからあんまり説明とか聞けなかった。(なんせビシッとビジネススーツ着て「お仕事でございます!」というビジネスマンに比べて私はどう見ても冷やかし客にしか見えないからな)
大きい会社らしく、電子書籍に関しても総合的になんでもやります!という展示。
ブースの展示自体は凸版の方が(テーマと説明が見やすくて)わかりやすかったな。
・絵に描いた餅っぽい…オープン本棚
大日本の方で気になったのは、このオープン本棚。
簡単にいうと、今乱立しているブックストアとその専用データを、一つのアプリで管理できるようにしますよという話。
これ、誰でもみんなアイデアとして同じ事は考える話だと思うんだけど、実現に向けては、各ブックストアとかの協力を取り付けないと行けないと思うのね。そこのハードルが高そう。
大日本のオープン本棚では、仕様をオープンにすることで「どうぞ皆さん参加してください」って話だと思うんだけど、そもそもストア側が参加することにメリットがなきゃ、しないわな。
結局大日本のhontoとその関連のブックストアが数社参加して終わりになっちゃわないか。
・両社ともにADPS対応表明
大日本、凸版、共にADPSへの対応を表明してました(笑)
凸版ではブース内展示でも「ADPS対応」って書いてた。
さらにAdobeのブース内に相談窓口として出張所まで!
いや〜なんていうか、とりあえずAdobeも一番頼みやすいところを巻き込んできたなぁという印象(笑)
だっていくら凸版や大日本が「対応!」って言っても、あれはコンテンツを持っているところが使うものだからあんまり関係ないと思うんだよね
・Quarkも電子書籍作成でお金を取ります。
Quarkが来てたので、Quark9の説明を受けてみた。
どうでもいいけど、Quarkのブース、Too.の説明員ばっかりで、うっかり捕まるとQuark本体じゃなくて、Quarkのプラグイン(Too.販売)の説明ばっかりされるぞ!気をつけろ!
Quark9では電子書籍作成機能がついているって事だったので、その辺の話。
機能的には、Quarkで作ったドキュメントから、iPad対応アプリを作成する、Quark App Studio for QuarkXPressというのが提供される。
それをつかって、電子書籍データを作成する訳だけど…やっぱりコンテンツごとに配信料としてお金を取るそうです!
Quarkよ…おまえもか…。
正確には、コンテンツ配信ライセンス料とアプリ作成ライセンス料ってのがあって、
Quark App Studio for QuarkXPressから、電子書籍コンテンツ(.zave)を書き出すのに必要な費用がコンテンツ配信ライセンス料。
年間契約で、年間に何コンテンツ書き出すかで29,000〜359,000円の価格設定がある。
さらに、電子書籍コンテンツ(.zave)ファイルをiPadのアプリ形式に変換する料金、これがアプリ作成ライセンス料で、1コンテンツ1アプリで12,100円。複数コンテンツ1アプリで60,180円。無制限なら120,360円。
つまり最低でも年41,100円からの電子書籍作成料がかかるって事。こう聞くと安いけど、これはあくまで最低料金で、作成無制限のコースを選ぶと479,360円…。
値段に関しては正式決定ではなく、ドルでの価格設定を円換算しただけだそうなので、今後多少の変更があるとか。
(ダウンロード数からの)従量制課金ではないから、Adobeさんよりお得です!って強調してたけど、いや、もうどっちでもおなじだよ…
つまり、ツールを提供して、そのツールで作るコンテンツから金をとろうってのが今の流行りなんだね!
・モリサワは文字にこだわった電子雑誌MC Magagine
モリサワで参考出品されてた電子雑誌ソリューション、MC Magagine。
いままでMC Bookで小説などのコンテンツ向けのソリューションはあったんだけど、今回は雑誌などがターゲット。
雑誌コンテンツなどのテキスト情報部分を、ポップアップさせて、読みやすく表示するという
InDesignやPDFなどの雑誌データをMC Magagineのツールで変換することで、テキスト部分などに自動的にこの処理が行われたデータになるのだそうな。
ルビや縦中横といった、テキスト体裁も再現。
InDesignのインタラクティブなパーツの変換については、現在開発中。
まだ参考出品ということで、価格などは未定。MC Bookのようなダウンロード数に応じた課金になるのか?と聞いたら、多分そうはならないと。純粋に電子書籍アプリ作成ツールになるもよう。
MC Magagineから書き出されるのは電子書籍データの「中間ファイル」これを(MC Magagineに)対応しているブックストアにアップデートすることで、各ブックストア対応のファイルに変換される…予定。
まだ各ブックスストアには交渉中なんだそうな。
モリサワはMC Bookもそうだけど、電子書籍に対する取り組みの姿勢というか方向性がきっちり決まってるよね。
「文字」にこだわり「文字を読む」ことに的を絞った電子書籍という。そこがぶれてないのは好感持てる。(まぁそれが売れるかどうかは別問題だけど…)
でも、他と違って、MC Magagineに関しては、コンテンツからお金は取らないみたい。
・何しにきたんだ写研!
今回、一番のトピックはこれでしょう写研!(笑)
いや〜よくも悪くも、話題をかっさらってましたな。
そもそも、今回の電子出版EXPOに写研がでる!って聞いたとき「一体何出すんだ?写研!」って皆思ったと思うのね。え?まさかまたあの、なんかテニス選手の名前の組版機とかだすんじゃないよね?って。
しかも、ブースが結構大きいのよ。かなり広めのスペースをとってる。Adobe とか、モリサワとかとおなじぐらい。ここまでの広さをとるってことは何か新製品でもだすのかっ!?ついに、ついに眠れる巨人が目を覚ますのかっ(大げさ)
出したもの。
これ。
いや、ほんと、冗談じゃなく、これだけ。
「このたび、これまでご評価いただきましたフォントを広く社会にお役立ていただくために、写研フォント開放の試みを始めます。今後の方向を決めさせていただきたく、ぜひ、皆様のご意見、ご要望をお聞かせください。」
今回写研から発表されたのは、この一文だけ。
つまり今まで写研のシステムでしか使えなかった写研フォントを、ほかのシステム(InDesignとか)でも使えるやつを出すかもしれませんって。そのご意見伺いのアンケートをやるために今回出店したらしい。広いスペースほとんど、アンケート記入するためだけの空間。
アンケートするためだけに、電子出版EXPO出るって…て、いうか電子書籍関係ねー!
その前にWebサイトぐらいつくろうよ!写研!出る前にせめてそのぐらいは!いまだに「写研」で検索してもなにもでてこないって!
話題の開放するフォントについてだけど、説明員に話をきいたところ
- フォーマットはOpentype
- 内部的にはほぼ開発できている
- 今回のアンケートなどを元に、リリースについて決める
- 発売時期や発売方法は未定
- フォントセット未定
- プロテクトや対象OSなども未定
- もちろん価格も未定
とにかく、なにもかも未定。
内部的にデジタルフォントとしてすでに持っているのは確かみたいだけど(今から一から開発しますってわけではない)でも、とにかく何もかも未定としかかえってこない。
一応、ブースの正面では、デモとかセミナーとかやってました。しかし、このデモがねぇ…なんというか…70年代なのよ…内容が…。
▲InDesignで写研書体が使えます。
InDesignとかで作られた紙面の見出し文字とかを写研のフォントに置き換えていくんだけど、その時の説明が「ではこの見出しをおしゃれなフォントに変えてみたいと思います」「うきうきわくわくしたイメージのフォントに…」ってなんていうか台詞まわしがふ、古い…。
変える書体もボカッシイとかだしな…。書体にも流行り廃りってのがあるんだなーと感じた。
▲多分説明員の女性が来ている衣装も、昔から使ってるやつなのでは…
セミナーはナールやゴナの制作者である中村征宏氏による講演ってことで、結構お客さんを集めてた。私も一応セミナーは聴いてみたけど…ちょっと物足りなかったかな…。内容はこちらにまとめておくので、興味がある人はこちらで。ゴナとかナールに思い入れがあれば面白いのかも。
ブースにいた説明員の皆さんも(明らかにコンパニオンとして来ている若い女性は別として)社員は年配の方ばかりで…。ああそうか、写研ってほんとに年配の方ばかりなんだ…って思った…(いや、もしかして会社には若い人もいるのかもしれないけど…)
だから、なんというか、あんまりけなしちゃ悪いような気がするんだけど…いや、なんか、刀が鈍るっていうか…ぶっちゃけ、自分より遥かに年上の人生の先輩方が、自分の仕事の成果物の思い出を並べて「この仕事はねぇ…」って思い出話してるのを「そんなことより、新しい商品はどうなってんだよ!おらおら!」っとか言えない!!
でも写研が崖っぷちなのは確か。
書籍なんかだと、いまだに「写研でないと」っていう仕事も結構あるらしく、その使用料でかなりの売り上げがあるって噂だけど、でもそれもいつまでもつのかな。
実際このままだと、10年後にはなくなっててもおかしくないのでは。
正直、私は写研という会社には何の思い入れもないので、写研が消えてしまっても構わないのだけど、でも写研という会社が、写研の文字という財産を抱えたまま沈んでしまうのは惜しいなと思うのね。
このまま、写研フォントと共に消えていくのか、それとも最後に、新しい形として次の世代へ手渡していくのか。
自分たちの仕事がいい仕事だったと思うのなら、なんとか次の時代に引き継いでいって欲しいものです。
とりあえず、書体一覧の載ってるWebサイトぐらいは作ってください。