出力の手引き15版 ついにPSがっ…………!!!
大日本スクリーンのTrueflow運用マニュアル「出力の手引き 第15版」がリリースされてます。
この15版、いままでの手引きとは決定的に違う部分がある。
出力の手引き15版からは、ついに、ついにPS/EPSの記述が消えたっっっっっっっっっ!!!!!!!!!
つまり、15版はPDFによる出力ワークフローについてしか載っていない。
メーカーからの「もうPDFでの出力しかおすすめしないもんね」という姿勢が明確に!
PDFしかおすすめしないといっても、PS/EPSをサポートしないというわけではない。
Trueflowでは従来通り、PSでの出力もできる。
その証拠に、これまでの(PSでの出力手順が載った)「出力の手引き14版」も継続して配布されている。(いままでは新しい版がでたら、古い版は削除されていた)これは「PS使って出力する人はこっちを見てね」という事らしい。
ただ、メーカーとしては15版からPS/EPSの情報を削る事で「今後はPDFでの出力がメインです」と、はっきり言ってるわけだ。
メーカーからはそう言うけれど…
さて、メーカーからの「もうPSやめてくれ」宣言が出たわけだけど、では出力の現場はどうなのか。
はっきりいって、現場はまだ全然PSやめられない。やめようという方向に向いているのかどうか…ってくらい。
もちろん、これは印刷会社にもよるので「すでにPDFでのワークフローに全面移行したもんね」ってところもあるとはおもうけど、多分規模が大きい出力現場になればなるほど、PDFワークフローへの移行は大変なんじゃないか
なんでPDFワークフロー移行がなかなか進まないのか
印刷会社の出力サイドから見た視点だけで考えてみる。
ひとつは、まぁ、いわゆる「過去の資産が」って問題なんだけど、規模が大きいとこになればなるほど古い環境での大規模な仕事をもってるわけで、単純にそれを新しいワークフローに移行するのが大変(古い環境のものを新しい環境に移行するのはそれなりに手間と時間がかかり、そこまでの手間ひまをかける予算がないとか、新しい環境での出力検証をしている余裕がない)とか。まぁそんな単純な話でもないんだけど、大雑把にいうとそういう問題。
あと「設備にかける予算」の問題。新しいワークフローに移行するには、設備(RIPとかね)の更新が必要なんだけど、その予算がないとか。小規模の印刷会社なんかだと結構ある。でもこの問題はさすがに大分解消してきたかなー。TrueflowがAPPE搭載してからもう大分たつし、古いRIPのサポートが切れてきたので、嫌でも移行しなきゃいけなくなったりしてるし。
設備の問題とかぶるんだけど「周辺協力会社との連携」の問題。どんな大手でも、自分だけですべての印刷をまかなってるってとこは少なくて、協力会社に外注をお願いする事はよくある。
協力会社がまだ新しいワークフローに対応していないのに、自分だけさっさと切り替えると、そういう協力会社に仕事をお願いできないということになる。だからワークフローをアップデートするときは、協力会社さんと足並みを揃えないといけない。
ミニマムな単位でいうと、データ入稿する方が「印刷会社があたらしいバージョンに対応してくれないから入校できない」っていうよね。あれと同じ問題が、印刷会社対印刷会社でもおこるわけ。
「内部のオペレーション行程の複雑化」新しいワークフローに移行するといっても、既存業務がすべて新しいワークフローにできるわけではない。
となると、どうしても従来のワークフローと新しいワークフローが一時的に混在した環境になる。
具体的に説明すると、たとえばAdobe社のアプリ。Adobeさんは新しいバージョンがでると(場合によってはでなくても)古いバージョンのバグを治さないことで有名ですが、そうやって放置されたバグのなかには「PDFだとでるバグ」ってのがある。
こうなると、そのバージョンでの出力は、PDF出力絶対不可な訳で、仮にPDFワークフローが導入されても現場では「このバージョンはPS運用で!」ってことになる。
アプリメーカーさんは、新しいバージョンを出したら「皆さん新しいのをつかいましょう!」で終わりかもしれないけど、印刷会社はお客様がそのバージョンを使い続ける限り、古いバージョンともおつきあいしていかなければならないのです。
と、いうわけで出力現場では「このアプリのこのバージョンはPSで!こっちはPDFで!」という二つのワークフローを使い分けていく必要があるわけだ。
これは結構めんどくさい。
二つのワークフローを使い分けるということは、出力機の設定も2種類もたなければならないわけで、それだけで管理の手間は倍とは言わないけど、まぁそれなりに増える。
さらに、2種類を使い分けるというのが人間の判断にまかされている以上、ヒューマンエラーによる事故にもつながりやすい。
だったら、従来のワークフロー(PS)環境をできるだけひっぱって使い続けたい…と印刷会社が考えるのも理解できる。
他にもPDF出力の際のRIP設定の問題(いままでRIPでデータを修正してきたという習慣をどうするか)とか、まぁ細かい事をいうと色々あるんだけど、なかなかPDFワークフローへの移行というのは、簡単にできる話ではないのでした。
では、PDFワークフローへ移行しないのか?
ここまで、印刷会社の視点から「PDFワークフローへ移行できない(したくない)理由」をあげてみた訳だけど、じゃ、印刷会社はこのまま当分PDFに移行する気はないのか?というと
いや、もう近いうちに嫌でもPDFワークフローを取り入れなきゃいけなくなる
…と私は思ってる。
なんでかってーと、話は単純で最近のAdobeソフトが作るデータはPDFじゃないとうまく出力できなくなってるから。
最近のAdobeソフト、とくに透明効果とかばりばりつかって作ったデータをPSにした時、うまくRIPがかからないって事たまにあるのよ。
PS(又はPDF/X-1a)で2時間かけても通らないのに、PDF/X-4にしてAPPEで出力するとするっっと出ちゃうってのが。
アプリケーションで作るデータが多彩な表現ができるようになって、それをPSで再現しようとした時に、複雑すぎるデータになっちゃうんだよね。
こういうパターンが今後どんどん増えていくだろうから、そうなると、APPEでのPDFワークフローを部分的にでも取り入れなければならなくなる。
それにAPPEでのPDF/X-4ワークフローは、出力の早さとか、出力データの保存時間の早さを考えると現場にも十分メリットがあると思うし。
RIPメーカーとしても、PDF/X-4&APPEの方がサポートしやすいだろうし。(データ構造がスマートでトラブルの対応がしやすいらしい)
なので、できるだけPS出力を引っ張りたいと考えている出力現場の皆様はそろそろ覚悟を決めなきゃいけないと思うぞ。
内部制作で、環境の切り換え時期に来ている業務なんかは積極的にPDF/X-4運用への移行を考えるべきでしょう。
あと、いつまでも古い環境とアプリにしがみついている、データ入校者の皆様も、そろそろ覚悟を決めてくださいねっ。EPSもアウトだからねっ!