Vista文字対応、DTP的対処その1
Vistaによる文字化け問題。
あちこちで解説してあるけど、あまりに詳しくJIS規格の成り立ちから説明しているようなものが多くて「結局、実作業ではどうなるの?」ってのがいまいちわかりにくいので、そこんとこを自分なりに整理してみた。
JIS規格の歴史とかその中身についてとか文字化けの原因とかは他でもっと詳しい説明してるので、あくまでも「現状のDTP作業においてどうすればトラブルをさけられるか」っていうとこをポイントに。
まず、Windows Vistaの文字問題とは何か。Windows Vistaの文字問題、この日記のタイトルも「Vista文字対応」としているので、まるで「Windows VistaというOS」に問題があるような誤解をされてしまうけど、これは正確に言うとそうじゃありません。
今回の問題は「MicrosoftがWindows VistaというOSで採用した『JIS2004という文字セットに準拠した新しい文字セットのフォント』によるトラブル」です。
Vista以前のOSでは、いままで何の文字セットが使われてきていたのかというと『JIS90』『JIS83』に準拠した文字セット。
ではこの文字セットが違うと何が違うのか。
『JIS2004フォント』の環境で入力したテキストを『JIS90フォント』『JIS83フォント』の環境で開いたらどこが違うのか。
簡単にいうと、『JIS2004フォント』の環境で入力した文字を他の環境で開いたときに
(1)字体が違う字体で表示される
(2)文字が抜ける
という現象がおこる可能性があります。
つまり、クライアントから入稿されたテキストデータを、DTP業務で使う為に開いてみたら「葛飾区の葛の文字が中の部分が人だったのにヒに変わってる!」とか「入力したはずの文字が抜けてる!」というトラブルになり得るということです。
これは逆にいうと『JIS90フォント』『JIS83フォント』で入力されたテキストを『JIS2004フォント』の環境で開くと同じようにトラブルになるという事でもあります。つまり、テキスト入力とDTP作業、同じ文字セットのフォント環境で作業をするという事が、トラブルを回避する方法であるということです。
ではこのトラブルはどうやって防げるのか。具体的に考えてみましょう。
まず、入稿されてきてテキストが『JIS2004フォント』の環境で入力されたものかどうかを判断しなければなりません。
これが第一のハードル。
入力されたテキストデータから、そのテキストが『JIS2004フォント』の環境で入力されたのか、そうでないのかを100%正確に判断する方法はありません。
と、いうことは、そのテキストを入力した人に「このテキストはどんな文字セットで入力されたものですか?」と聞くしかないということです。
さぁこれが大変です。多くのクライアントは、入力される文字セットについてなんて、興味もないし、まったく意識していない人がほとんどです。そんな人たちに「文字セットは?」なんて聞いても「わかりません」という答えしか帰ってこないでしょう。
これはアプローチを変えてみる必要があります。
まず使用しているOSを聞いてみるのはどうでしょう?Windows Vistaを使っているなら、JIS2004の文字セットを使用しているのでは?
これは間違いです。文字セットはあくまで、フォントに付随するものなので、Vistaを使っていても、JIS2004対応のフォントを使っていなければJIS2004での入力はできません。
では使用フォントも聞いてみればいい!VistaでMSゴシック、MS明朝、メイリオならJIS2004でしょ?
残念ながら、これもだめ。Microsoftはご親切にも「Vistaでも使えるJIS90準拠のMSゴシック、MS明朝」ってのを配布してるんです。同じように「XPで使えるJIS2004準拠のMSゴシック、MS明朝」ってのも配布してます。「VistaでMSゴシック」という条件だけでは、どちらであるかを判断できません。
ただし、この2つのフォントはそれぞれバージョンが違うので、そこで判断することはできます。つまりバージョン2.5のMSゴシックならJIS90に準拠した文字セット。バージョン5.0ならJIS2004の文字セットです。
これで判断はできました。…でも本当にこれで大丈夫でしょうか?
たとえば、クライアントがMSゴシックでもMS明朝でもメイリオでもない、まったく聞いた事のないフォントを使っていたらどうでしょう?聞いた事のないフォントなら、JIS90準拠だろう?そうかもしれません。でもそうではないかもしれません。今後JIS2004準拠のフォントがどんどん増えてきたら、フォント名やバージョンでは判断できないものがでてくるかもしれません。
そもそも、使用OSとかフォントとか、あまりごちゃごちゃ聞いても、答えてくれない(答えられない)クライアントは多いです。
質問はシンプルに。そしてトラブルをさける為の最低限の言質をとっておけるようにしましょう。
そこで、データ入稿指示書にこんな項目を付け加えておくのはどうでしょう。
「JIS2004準拠の印刷標準字体で印刷をしますか?指定のない場合JIS90準拠の字体で作業をいたします」
これに○をつけた入稿指示書がはいってきたらJIS2004のフォントで作業をします。ついてなければJIS90準拠で。
本当に入力された環境がどうだか調べる必要はありません。私たちが作業をした後で「違うじゃないか!」と言われても「でも指示書にそう書いてありますから」という自分を守るための言質です。
とりあえず、現段階でJIS2004フォントの環境での入力は少ないでしょうから、デフォルトはJIS90準拠で作業する、特別な指示があったらJIS2004準拠で作業、という事でいいと思います。
今後JIS2004という指示が増えてきたら、デフォルトをJIS2004に変えましょう。
え?クライアントが入稿指示書を書いてくれない?…それは別の問題です。そこまでは知りません(笑)
ここまで書くだけですっかり長くなってしまった。
ほんとはここからの「実際に入稿されたJIS2004データをDTP環境で作業するには」という辺りを書きたかったんですが、続きはまた。