ちくちく日記

DTP系備忘録。真面目にやってます。

このヘタクソっ!!!!!!

先日、ある人と飲んでいた時その人がこう言った「Adobeにとってはさ、DTPユーザーとかってまぁMilk-cowなんだよね」


Milk-cow = 乳牛。


思わず笑ってしまった。
確かに、たいした販促活動しなくても、定期的にアプリケーションを購入してくれるDTP、印刷ユーザーってのは、Adobeにとっては、ただ飼ってればミルクを出してくれる乳牛みたいなものだ。

さて、その我らが飼い主であるAdobeさんですけど、最近またえらい発表してましたね。


アドビ クリエイティブ製品のアップグレードポリシー改定についてのご案内


まだ詳細発表になってないので、あれなんだけど、まあ簡単にいうと

「こんどから、月額5000円で最新アプリ全部使えるっつープランはじめっから」
「あと、いままで2バージョン前の客まで割引価格で新しいバージョン買えるってことにしてたけど、あれ、やめるわ。割引は前のバージョンもってるやつまでね」

って話。

これ、Adobeのユーザー登録したすべての人にメールでおくられてきたみたいで、まぁこのメールが届き始めたあたりから、私のtwitterのタイムラインは、阿鼻叫喚というか、なんというかAdobeへの呪詛の言葉に満ちあふれておりましたですよ。

怒りの理由は人それぞれなんだけど、主なところは
「いままで2バージョン前までOKって言ってたのに、突然変えますってどういうことだ、せめて、次のバージョンまでは現在のアップグレードポリシーで、その後から変更すればいいじゃないか」
「月額5000円っていうけど、年間6万円、2年に一回のバージョンアップだったら12万円で、そんなに安くないじゃないか。いままで2バージョンに一度バージョンアップしていたのに比べたら高い」

って感じ。


知ってる人は知ってると思うけど、最近のAdobeっていろいろキャンペーンやってるんだよね。

キャンペーン期間中にAdobe製品を購入した人にキャッシュバックキャンペーン」とか「55歳以上の方がAdobe製品を購入したら割引になる期間限定キャンペーン」とか。
ほかにも、「いまからAdobeストアで購入してくれた人にタイムセール!」みたいなこともやってる。

私がこのキャンペーンを見て思ったのは「数字、足りてないんだな…」って事。
「期間限定」で割引するってことは、割引をしてでもその期間中になんとか買ってほしい、つまり、その期間に予定していた売り上げに達していなくて、なんとかそれを埋めたいからやるんじゃないかな。

でも、こういった割引キャンペーンでアプリを購入する客って「いずれ買おうと思ってたけど、割引なら今買っとこう」という客で、つまり需要の先食いをしているだけなんだよね。さらにアプリケーションの新発売から時間がたった今、こういった割引キャンペーンをする事に対して、早いうちに正規の値段でアプリケーションを購入したユーザーからすれば「Adobeは我々のようなまじめなユーザーをないがしろにしている」と不興を買うし、次のバージョンが発売された後「どうせしばらくまてば安くなるんだから、買うのはまとう」と思わせるだけで、結局Adobeの欲しい、全体的な売り上げ増加にはつながらないと思う。

Adobeもそんなことわかってるんだろうけど、それでもそんなキャンペーンやってるってことは、新バージョンを発表しても予定していた売り上げにいかない、つまりアプリケーションを購入してくれる客が減ってるって事なんだと思う。


そう思って周りをみると、最近「バージョンアップの度に購入してます」って人、少ないよね。
まぁ私の周りはヘビーユーザーが多いから、文句をいいつつも新製品発売の度に新バージョンを入手って人もいるにはいるんだけど、お客様とかを見ていると「数年前にかったCS2をずっと使ってます」とか「バージョンアップは今回は見送って次のバージョンにします」とかそういう人がいっぱい。


Adobeだって商売だから、アプリケーションを買ってもらえないと利益にならない。
新しいバージョンを出しても、予想した売り上げに行かない(買ってもらえない)、新しいバージョンがどのぐらい売れるのか予測ができない。
となると、なんとかしてユーザーにお金を出してもらえる方法を考えなければならない。古いバージョンを使い続けているユーザーに新しいバージョンを買ってもらえる方法を考えなければならない。しかも、できれば売り上げの予測ができて、継続的に収入があるような形で。


話は簡単だよね。


古いユーザーにあたらしいバージョンへ移行させ、継続的にお金をださせる。継続をやめたら(1バージョンとばしたら)損をする仕組みにしてユーザーが離れられないようにする。
ついでに、インストールもネット経由にして、パッケージや在庫管理の手間をなくせば一石二鳥、経費も削減できて、しかも安定した定期収入も確保できる。
Adobeが今回発表したAdobe Creative CloudAdobeにとってはとてもメリットのあるやり方だ。


「でも、だからといって、いままでこうしますっていってたアップグレードポリシーを突然かえるとか、いままで買ってきたユーザーを蔑ろにするようなことしてもいいのっ?!」


いいんだよ。

なぜなら、この市場でAdobeは一社独占の企業なのだから。
今話題のオリンパス。あそこは内視鏡の分野でシェア70%、日本国内でいうとほぼ100%の独占企業なんだそうな。
内視鏡どころか、その周辺機器や消耗品まで全部握ってる。そういった消耗品などは非常に高く、大量購入するからといって割引などはほとんどない。でもユーザーはそこしかないから、買うしかないんだと。

オリンパスだって、Adobeだって、なにもしないで市場を独占してきた訳じゃない。
Adobeが市場を独占してるのは、他に選択肢があるなかで、Adobeの製品を選んでもらえるようにAdobeが努力し、私たちユーザーがその製品を選んできたからでしょ?
独占している企業が、価格を決める。それは独占企業に与えられた権利だ。


ただ、今回のAdobeのやり方でまずかったのは、
(1)月額5000円という、ちょっと高く感じる値段設定
(2)アップグレードポリシーを突然一方的に変更
でユーザーの不快感を買ってしまった事だ。

最初に私たちはAdobeにとってMilk-cowだと言ったけど、今回のAdobeのやり方は、乳を出す量が減りつつある乳牛をむりやり縛り付けて、絞りとろうとしているようなもんだ。
ただ飼ってれば細々とでも乳をだす乳牛も、無理矢理押さえつけて搾り取れば嫌がって逃げてしまうかもしれない。


Adobeが各ユーザーから、月額5000円ぐらいのお金をとりたいとする。それは構わない。
でも取り方ってあると思うんだ。

まず、定期的に安定した収入が見込める月額制というのはAdobeにとって絶対的にメリットなのだ。
だったら、そのメリットを受けるために、なんとか月額制に入ってくれるユーザーを増やさなければいけない。それにはとにかく騙してでもユーザーに「あら、こっちが、お得だわ、入りたいわ」と思わせなければならなかった。

騙してでもと言ったけどぶっちゃけ、最初はやっっっすい料金で餌を撒くようにして月額制ユーザーを集めて、それから値上げすりゃよかったんじゃないか。
最初は安い!と感じる料金で呼び込んで、あとから色々なオプションで値段をつりあげる。携帯がそうでしょ?なんで各キャリアがあれだけ乗り換え割引とかして新規加入者を呼び込むんだと思う?そら定期的に入ってくる月々使用料がおいしいからでしょ?


「月額、2800円で使い放題!さらにすぐに加入していただいたユーザーは1年間は2500円でご優待!」

これだったら、かなりのユーザーが「安い!」と感じたと思う。
そして後から「○○のサービスがプラス500円で!」とかユーザーに「そのぐらいなら追加してもいいかなー」というオプションを色々提供する。
もしくはもっと簡単に「アプリ1本月額使用料1000円!」とか。もちろん1本しか使わない人もいるけど、たいていの人は2~3種類、場合によっては5種類以上つかってるでしょ。

そんなやり方をすれば、月額5000円ぐらいわりと簡単にクリアできたと思うんだ。

今回のAdobeの発表はユーザーにとって、Adobeへの不信感、不満感を植え付けるだけだ。今後月額制に移動したときも「Adobeは毎月こんなに金をとっていく」という不快感を伴う。
そうじゃなくて、ユーザーに「この程度で使えるの?お安いわ」と錯覚させるやり方をとらなければならなかった。

乳牛を縛り付けるのではなく、真綿で優しく優しくくるんで、身動きできないようにすべきだった。そして身動きとれない乳牛から優しい顔してミルクを絞り続ければよかった。




だから私がAdobeに言いたいのは、それも声を大にして言いたいのは、この一言だけだ。



もっとうまくやれよ!
このヘタクソっ!!!!!!