ちくちく日記

DTP系備忘録。真面目にやってます。

JAGATのEPUB3セミナーに行ってきました!

JAGAT テキスト&グラフィック研究会のEPUB3セミナーに行ってきました!

有料セミナーなんだけど、別にレポートするのはかまわないだろうと思うので、レポートを。(JAGATさんからも映像、写真、音声などなければレポートはかまわないとのことなので)
基本的に講師の境氏の話をなぞってレポートしますが、所々私の感想と補足が(括弧とじで)入っています。
なげぇよ!読めないよ!って人は、最後に3行で【まとめ】を置いとくので、とりあえずその3行だけ読むとよろしい。

テキスト&グラフィック研究会セミナー
EPUB3で変わる電子書籍の表現力

講師は境佑司さん。私はこのかたは電子書籍関連のセミナーで何度か名前をお見かけしていたのと、Web関連の本をたくさん出されているということで、Web系のお仕事の方なのかなーと思っていたのだけど、ご本人曰く、専門は教育関連のマネジメントらしい。

電子書籍に関しては、電子出版関連のPodcast「日刊徒然音声雑記」などで制作に関する様々な事などを配信していたり、facebookで「電子書籍メディア論」という電子書籍コミュニティなどを主宰している。このセミナーのスライドPDFもそちらで公開されてた。さすがにリンクは控えるので、興味のあるかたはfacebookで検索してみるといいと思う。




本日の講演について

EPUB3.0はまだ仕様策定中であり、毎日のように取り巻く環境がアップデートされている。
その中でテストをしているが、かなり手応えを感じている。2.0とは大分変わるのではないか。ただし、商業出版につかえるようになるのは、早くても秋以降になるだろう。
EPUB3.0のテストを行っているが、今のリーディングアプリはすべて2.0の仕様にあわせたものだ。
その中で3.0の検証を行っている、その中の問題点なども今日話したい。

去年は電子書籍ブームで「電子書籍元年」と言われた。「電子書籍元年」と言われたのは初めてではなく、2000年頃にも電子書籍元年と言われた年があった。今の元年も以前の「セカンドライフブーム」(な、なつかしい…)のようにそのまま終息してしまうのではないかとも思ったが、まだ大丈夫のようだ。今年は「スマートモバイル(モバイル端末)元年」になるのではないか。


EPUB電子書籍)と一般的な書籍の一番の違いは何か?

電子書籍は機械(デバイス)がないと読めないというところである。

電子書籍を普及させるには、まずどうやってデバイス(機械)を買ってもらうか?という問題がある。
2000年の電子書籍元年にもそこは問題になり、新しくデバイスを買ってもらうのは大変なので、ユーザーが既に持っているデバイス(ケータイ)で読んでもらうという方向になった。
つまり、2000年の電子書籍ブームはケータイ向けの電子書籍という形で発展してきた。

現在、電子書籍に対して複数のデバイス(とリーダーアプリ)があり、それぞれのデバイスによって読みやすさが変わってくる。
個人的にモリサワのMCBookはその中でも読みやすいと思う。


いかにユーザーにハードを買ってもらうか

(2010年の電子書籍元年は、まずデバイス(端末)から始まっている)
電子書籍の端末には専用機と汎用機がある。いま、わざわざ(専用の)ハードを買って電子書籍を読む人というのは、少ない。
専用機は電子書籍専用端末(AmazonkindleSonyのReaderなど)で汎用機はiPadのようなタブレットバイススマートフォン、PCのような電子書籍以外の用途にも使えるもの。

(端末がもっと安くなれば別だが)数万する専用端末だと買い手が少ない。やはり汎用機でないと売れない。

汎用機では、端末のサイズ、解像度、処理能力などがすべて違ってくる
バイスを限定するか?すべてのデバイスに対応するか?

すべてのデバイスに対応するのはそれだけ制作コストがあがり、さらに難易度も高くなる。
ただ、まだ市場が小さいのでできるだけデバイスを限定しないほうがいい


EPUB3.0は現在IDPFにて策定が進んでいるところ。
規格策定にはW3CからのWeb標準化技術やdaisy consortiumの音声読み上げ(録音図書)技術なども関わっている。


EPUB電子書籍)の歴史について

日本における最初の電子書籍元年は2000年頃。この頃ボイジャーの.bookやシャープのMDF、XMDFができ、EPBUの前身となるOEBPSができた。
この後(電子書籍の歩みは)しばらく中だるみがあって、2010年に二度目の元年を迎えている。
10年の間、試行錯誤を重ねてきたが、その中で日本の電子書籍はケータイ文化としての独自発達があり、2010年の2度目の元年では、スマートフォンでの新しい展開となる


2.0.1と3.0の違いについて

EPUB3.0で新たに策定されるもの

  • EPUB Publications 3.0

EPUBファイルを)どう構成するのか(ファイル、フォルダの構成について)

  • EPUB Content Documents 3.0

どうやって作るのか(デザイン的な設定について)

  • EPUB Media Overlays 3.0

音声と同期する方法(音声読み上げの実現)

  • EPUB Open Container Format

どうやって発行するのか(構成されたEPUBファイルを束ねて出版する方法)

EPUB2.0では、作られる書籍データのほとんどが文芸書だった。一部に実験的な試みをしたものもあったが、ほとんどがテキストコンテンツのみのもの。
EPUB3.0では大分変わるだろう。
EPUB2.0の規格では文字中心のものしか表現できなかった。3.0だと表現の幅がかなり広がる

EPUB 3.0で実現できる表現としては

  • 国際化(縦書きなど、他言語対応)
  • リッチレイアウト(様々なレイアウトに対応)
  • インタラクティビティ(クリックアクションなどへの対応)
  • マルチメディア(MP4、MP3、ビデオフォーマットの埋め込み)
  • アクセシビリティ(音声読み上げ)

いままでEPUBのターゲットは文芸書など、限られたものだけだったが、EPUB3.0ではほとんどの書籍が表現できるようになりつつある。

facebookのコミュニティではすでに3.0で作成したプロトタイプなどが出回っている。インタラクティブな学習参考書など、いままで電子書籍アプリとしてしか表現できなかったものが、EPUBで表現できる。
あまり表にはでてこないが、成人向けのものも実はアンダーグラウンドで結構出回り始めている。
数式などいままで表現できなかったものも表現できるようになってきたので、専門書などもEPUBのターゲットになる。


EPUBによる電子書籍の設計について

EPUBの特徴は)ダイナミックページネーション(リフロー型の表現)である。
HTMLのように、すべてが一続きになっている巻物式ではなく、1ページ1ページ(ページをめくるという動作があるように)ページが独立している。

EPUBの作成テクニックの中に「泣き別れ処理」というのがある。
(ページ内のコンテンツにおいて)見出し、本文、画像などのひとかたまりを、分割せずに、まとめて次ページに送るという処理。
これをやるとデメリットとしては、ページ内にぽっかりと空間があいてしまったりするが、こういったテクニックが必要なのは、スクロールしてすべての文章をみるというHTML式ではなく、ページでみるというリフロー式だから。

電子書籍のリフロー式では、デバイスにあわせてページレイアウトを調整する必要があるが)EPUB3.0ではメディアにあわせて、2段組みにするなど、組み方を自動的に変える、メディアクエリに対応している。


EPUBファイルの構造化について

EPUBファイルのフォルダ構成など構造化について、現在は作成者が意識して行う必要がある。フォルダ構造をきちんと理解しておく事が必要。
現在EPUBファイルの編集で一番使われているアプリケーションはsigilであるが(EPUB2.0の書き出しでは)使うと自動的に対象のフォルダに書き出される。今後(EPUB作成アプリケーションなどが充実してくれば)こういった作業は自動的に行われるようになるだろう。
InDesignなどで書き出すEPUBファイルもいずれは(フォルダ構成を)自動で書き出せるようになるだろう。現段階では手動でフォルダ構成を作らなければならない。


メタデータについて

今、流通しているEPUBファイルのなかには、メタデータがちゃんとつけられていないものも多いのだが、電子書籍データが(デバイスに)たまってくると、メタデータのついていない書籍は分類できなくなる。
メタデータのついていない書籍データはWebページの情報と同じである。メタデータで分類できるからこそ、書籍データとして価値がある。メタデータはきちんとつけるようにしよう。


ナビゲーションについて

ナビゲーション(目次)も大事。
ちゃんとやっていないと、電子出版データで目次がついていないのは、紙の書籍で目次がついていないより(目的の情報にアクセスするのが)大変である。


ページデザインについて

メタデータとかナビゲーションについては、ある意味仕様書通りにつくっておけばよいところだが(紙面)デザインは一番頭を悩ませる部分である。
まず、電子書籍では、縦表示、横表示があり、それによってデザインが変わる。
さらにデバイス、リーダーによっても表示が変わる。スタイル指定をちゃんとしておかないと(シンプルなテキストの)本文表示ですら変わってしまう。

iBooksとstanzaでの表示を比較して)見開き表示する、しない。縦横表示を切り替えたときの表示のさせ方、などデバイスによってかなり変わってしまう。
すべてのデバイスで同じように表示できるデータをつくるというのは、ものすごく大変。


リーダーのデフォルトスタイルを理解する

スタイル指定さえしておけば、同じように表示できるのでは?と思われるが、デバイスによってはスタイルが効かないものもある。

これは、そのデバイス(リーダーアプリ)の初期設定によって、表示が決められているものがあるから。
リーダーの設定のデフォルトスタイルがどうなっているかを意識しなければならない。

たとえばWebブラウザでもHTMLファイルの表示で、デフォルト(独自)のスタイルシートがあり、それがブラウザごとに違う。
電子書籍でも同じ事がいえる。
Webブラウザの表示の違いについては(ユーザーによる)各ブラウザのデフォルト比較表のようなものが作られているが、電子書籍ではまだそういったものはない。
Webブラウザがバージョンによって表示に違いが出るように、電子書籍リーダーでもバージョンによって違いがでたりしている。

たとえば、リーダーアプリとしてスタンダードなAdobe デジタルエディションズなどは、デフォルト設定ではマージン幅がかなりせまい。
これは(紙面の)デザイナーがそのことを考慮して、デフォルトとは別でマージン指定をしないと読みづらい。
デザイン作業において、各リーダーのデフォルト設定を理解して進めていかないと、同じ表示をさせるのに手間がかかってしまう。

リーダーのデフォルト設定を(個別のデザイン指定で)上書きする方法も、リーダーによって変わる。すごく面倒だ。
Webだと、一度ブラウザのスタイルをリセットする(CSSリセット)そして、デザインを上書きするという方法。
電子書籍でも同じアプローチ(デフォルトスタイルの要素設定をすべて0にして)でデザインの上書きをやっている人もいる。ところがリーディングシステムには推奨スタイルというのがあって、システムによってはリセットしても推奨スタイルが効いてしまう。たとえばKobo eReaderは推奨スタイルのオフをしない限り、いくらデザインを上書きしても、効かない。


なぜ、こういった推奨スタイルがあるのか?

それは電子書籍ストアでの販売(戦略)に深い関係がある。

電子書籍ストアは、できるだけ販売書籍点数を増やしていきたい。しかしそれには制作コストを下げなければいけない。(デザイン指定など)制作の手間ひまがかかるようだと、出版社が電子書籍を作成してくれなくなるから。
できるだけ制作コストをさげるため、CSSなどのスタイル指定をしなくても、kobo側でデフォルト設定を適用して、可読性、視認性を保証する。
こういった推奨スタイルは、面倒なデザイン指定をしなくても、電子書籍を規定フォーマットで表示してくれるが、独自のデザインを表現したいときは、まず推奨スタイルをオフにしなければならない。


EPUBは汎用ビューアーで同じように表示できるか

EPUBを作れば、EPUB対応ビューアーならすべて同じように表示されるだろうと思っていたが、やはりWebブラウザと同じように、リーダーによって違いがでてしまう。

電子書籍ストア専用のリーダーアプリなどは、そこのショップで買った書籍を簡単に表示するための独自機能がそれぞれついている。これを無視させて、自分のデザインで表示させるのはなかなか大変。

強制的に上書きさせるためのタグ設定
たとえばStanzaで強制的にスタイルを適用させるには

.headingright{
text-align:right !important;
}

というようなタグを書けば可能。
しかしこれはおすすめできない。
これをやるとすごい数のタグをつける事になってしまう。どうしてもやむを得ない場合の処理とすべき。


フォント変更による見た目の変化について

リーディングシステムでのフォント変更、文字サイズ変更によっても見た目はがらっと変わってしまう。
パソコンなどで読む場合はウインドウサイズが可変であり、縦横のサイズが自由に変わることも考慮する。
文字はリフローされて自動で流れるが、画像の場合は伸縮自在にする等、工夫にして見やすさを確保する。条件によっては画質が荒れてしまうなどの問題もある。


フォントの埋め込みについて

iPadiPhoneなどではフォントを埋め込まなくてもきれいな表示だが、Windowsでみる場合はフォントを埋め込んでおかないと、ガタガタの表示になってしまう。
商品として売るなら、埋め込まないと商品にならない。

iBooksなどでも、フォントを埋め込む方法がある。
Sigilで指定フォントを特定のフォルダに入れて埋め込むという方法。独自のやり方なのでおすすめはしないが。
iBooksは実はいろいろと拡張する事ができる。PDFをiBooksで埋め込み表示するようにできたり、AppleiBooksで独自の拡張をいろいろとやっている。
こういった独自拡張を使う事をおすすめはしないが、たとえば、フォントを大量に埋め込んだ時の動作を確認したい等、実験的な事をやるためにはiBooksのこういった機能はつかえる

こういったEPUB2.0.1で様々な表現を実現するための裏技的なバッドノウハウはいろいろあるが、それを広く使うのはやめた方がよい

EPUB3.0ではそんなバッドノウハウがすっとんでしまうぐらい表現力があがっている。
3.0対応のリーダーなら、いままでのそんなノウハウは必要なくなる。

EPUB2.0での(電子書籍データ)作成作業は、Webデータ作成に近い思っていた人が多いが、3.0では紙面デザイン作業に近くなっている。
Webデザインのような(ある種、大雑把なデザインではなく)エディトリアルでの(緻密な)デザインスキルが活かせるようになるのではないか。


電子書籍アクセシビリティ

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)への対応
EPUBはWCAGにそって制定されている。
WCAGはW3Cが規定しているWebアクセシビリティの実現に関するガイドライン
裏技等をつかわず、EPUB仕様に沿ってつくられたEPUBであれば、10年後、20年後も読む事ができる(かもしれない)


EPUBファイル制作について

EPUBファイルの作成自体はsigilなどを使えば簡単。
ただし、その際EPUBの仕様をきちんと知っておく事。
仕様をきちんと理解して作るとなるとWeb仕事に近いと感じるが、デザインの人はInDesignから作りたいだろう。
待っていれば、いずれ(InDesignなども対応し)オーサリングソリューションがでてきて、自動化されるとは思うが、それにしてもEPUBの仕様を理解しておくにこした事はない。


EPUB作成後のデータチェック

iBookskindleといったマーケットに出品する電子書籍ファイルなら、その専用リーダーアプリでの表示のみをチェックしておけばよいが、EPUBファイルとして配布するのであれば、複数のリーダーでのチェックがいる。


作成したEPUBファイルを(配布する前に)チェックするポイントは

  • デフォルトスタイルのチェック

バイスごとのデフォルトスタイルでの見た目を確認

  • 縦、横レイアウトのチェック

WIREDマガジンなどが有名だが、縦横で表示を切り替える場合の表示を確認

  • 文字サイズの変更によるレイアウトチェック

文字サイズを変えたときに、レイアウトがどのようにかわるかを確認

  • EPUB CheckによるEPUB構文のチェック

EPUBの規格にあっているかを確認

  • EPUB3.0のレイアウトのチェックはブラウザで

EPUB3.0については、まだ正式なリーダーアプリがない。
しかし、EPUB3.0の中身はHTML5やCSS3なので、レイアウトについては対応するブラウザで検証する事ができる。


EPUB3ではデザイン指定がかなりできる。
InDesignがEPUB3.0書き出しに対応すれば、紙面デザインのかなりの表現を書き出せるのでは。
今後対応ビューワーがでてくれば、かなりの表示クオリティが期待できる

Webデザインにおいては、そこまで細かいレイアウトコントロールは必要なかった(できなかった)が、EPUB3.0ではInDesignでのエディトリアルデザインスキルが活かせるのではないか。
バイスでの表現能力が紙のものに近づいている。表示精度がたかくなればなるほど、デザインクオリティも高いものが求められる。


電子書籍ファイルの販売について

海外の場合、電子書籍ファイルの販売時、MOBI(amazon kindle用)とEPUB、PDFの3種をセット販売することが多いようだ。
いろいろなデバイスで読めるようにという配慮。日本ならPDFとEPUBの2種でいいのではないか。


EPUBのビジネスはいつ頃から普及するか?

(いまの電子書籍市場は)いますでにリーダー(デバイス)を持っている人がターゲットユーザーである
(今のところ、デバイスを持っている人というのはIT関係の仕事をしているといった人が多いので)今売れている電子書籍はIT系の専門書などが多い。

教育分野では、PDFでの電子書籍EPUBへ置き換えるという仕事が進んでいる。
EPUBで金になるとしたら、(文芸書などの)電子書籍より、参考書、教科書などの方が仕事がある
(本格的にEPUBでの出版が増えてくるまでは)今はそういった仕事をした方がよい


スマートフォン等のデバイスを対象とした新市場の動向

(アプリ系電子書籍や独自形式の電子書籍では、デバイスの変更に対応できないが)
EPUBなら、デバイスが変わっても、コンテンツを引き継げるというメリットがある

紙の本のエディトリアルのスキルを継承しつつも、紙にない新しい革新も電子書籍でやっていかねばならない。


【質疑応答】会場からの質疑応答

Q.実際、今日本でEPUBファイルを売れるマーケットはあるのか?
A.ほとんどない。パブーぐらい?
海外では出版社が独自に電子書籍ファイルを販売している。日本でも出版社が独自にやっていいのではとおもうが、多分売れないのではないかと思う。
AppleiBookストアの開始を待つ方がいいかもしれない

Q.EPUBからXMDFへの変換は簡単だと(eBookジャーナルに)書いてあるのだが、EPUB3からはどうなるか
A.(3.0、2.0のどちらでもEPUBからの)XMDFへの変換が簡単かどうかわかりません。技術的に可能という話では?

Q.EPUBとEMDFとどちらがよい?
A.現時点ではXMDFだが、iBookストアなどが日本で開始されたら、EPUBの波が来るかも


【感想】
EPUB3.0セミナーですが、単にEPUB3.0の機能紹介だけではなく、広い観点からEPUBを取り巻く現状についての報告セミナーでした。
EPUB2.0では規格の制約で、限られた表現しかできなかったところが、3.0では大幅に表現の幅が広がってるみたいです。
EPUB2.0ではその制約ゆえに、様々な(バッド)ノウハウが培われていたようですが、3.0では必要なくなりそう。
ただしやっぱりEPUBを再現するリーダーアプリによって表示が変わってしまうだろうと考えられるので、そこをどうするかが今後の課題。EPUBコンテンツを売るなら、EPUBリーダーもセットとして売って、出力デバイスを制限して再現を保証するか、それともすべてのデバイスでの再現を保証するために、EPUB側で対策するか。

こうなると、InDesignのEPUB3.0書き出し対応がどの程度対応するのか気になるところ。
Adobeのスタンスとしてはグラフィカルな(インタラクティブな)電子書籍はADPSで、文芸書などの文字中心のものをEPUBでという方向らしいけど、インタラクティブなコンテンツも、EPUB3.0で再現できるのなら、ADPSでわざわざ変換する必要ないかも。
いままでの経験上、Adobeソフトからこういうタグテキスト系を吐き出すと、もう使い物にならないようなものをはいてくれる事も多かったので、そこらへんも気になる…(EPUB3.0書き出し対応したけど、結局一から自分で書いた方が早いよ!みたいな…)

懸念は、現在の電子書籍市場の狭さ。
専用端末、汎用端末ともに、持っているユーザーはごく一部。普及しつつあるスマートフォンあたりが、電子書籍市場のターゲットになるのでしょうが、その中のどの程度の人数が電子書籍を購入してくれるのか?
今は買いたいと思うコンテンツも少ないし、やっぱりデバイスが変わった時に読めなくなるという不安があるから、ユーザーとしても電子書籍は買いにくいよね。と、いうか今電子書籍買っている人の大半は(電子書籍出版の)関係者じゃないかって気がする。AmazonkindleAppleiBookストアあたりが日本市場に対応してくれれば一般ユーザへの普及もすすむかもしれないけど。
ガラパゴス的進化をしたケータイでのコミックユーザとか母数は多そうなんだけど、なんとなく今の電子書籍論では無視されてる気がするのは気のせいかなぁ。
個人的な意見をいえば、電子書籍で買いたいものって、おしゃれでリッチな雑誌とか、高尚な文芸、文学書とかではなくて、読み捨てできるような、漫画とか週刊誌みたいな(ある意味下世話な)コンテンツを安く買いたいって感じなんだけど。エロとか漫画は売れるよね…。


【まとめ】
EPUB3.0は表現力大幅アップ!2.0とは違うぜ!エロコンテンツだって可能だ!
でも、表示はデバイスやリーダーアプリに左右される!そこをコントロールしていくのは3.0でも大変そうだよ!
EPUBで作成したデータの流通に関しては今のところほとんど市場がない!今後に期待!