ちくちく日記

DTP系備忘録。真面目にやってます。

Adobe PDF Print Engineのメリット

前回の日記に書こうと思ったけど、入りきらなかったので追記。

先日のセミナー、Adobe PDF Print Engine(以下APPEと略)の説明の中でちょっと面白い物を見た。

APPEのメリットについて、いくつかの出力機メーカーのセミナーなどで「同じエンジンを搭載することで、プルーフも最終出力も同じ出力結果を得る事ができます」という説明をしているのだけど、これちょっとわかりにくい。

「同じ出力結果を得る事ができます」と聞いて、どう感じるかは、その人の立場(と経験)によって違うと思うのだけど
(1)「えー、でもいまだって、カンプと最終出力は同じにでてるでしょ?モニタに表示しているデータと同じじゃないの?」
(2)「出力機が違うのに、同じ結果になるなんて、ありえない。画面表示とイコールであるかどうかもあやしい」
大体この2つの意見に分かれるのではないかと思う。

(1)の意見「1台の出力機からしか出力しない人達」がこういう意見を持つ事が多い。デザイナーとか制作会社のオペレーターとかに多いかな。データの出力を常に同じ出力機の出力でみているので、この人たちにとって「正しい出力=このカンプ」である

対して(2)は「複数の出力機から出力し、その結果を見ている人たち」つまり印刷会社や製版会社の出力部門の人間である(笑)
この人たちは「出力機が変われば出力結果も変わる」という事例を嫌というほど(ええほんとに嫌になるほど)知っている。

(1)と(2)の間の溝は深い。
(2)の人たちは言う「入稿されるときは、かならずお客様の環境でのカンプ(出力見本)を添付してください」
(1)の人たちは言う「すいません、カンプつけてないんですけど、でも、データ通りだしてくれれば大丈夫ですので」
………大丈夫じゃないから出力見本みせろっていってんだよぉぉぉぉ!!!

なぜ出力見本をつけろと言うかというと「出力機が変われば結果も変わる」からである。
同じデータを正しく開き、同じように出力していても、出力機によって違う結果がでる。
たとえば、オブジェクトが消える、破線の間隔がかわる、深緑色のオブジェクトがうすピンクになって出力される…(全部ほんとにあった。)

「でもデータ開いて画面上で確認すればいいじゃない」甘い。画面表示とも違う場合があるのだ(いやそもそも、出力に対して画面表示とつきあわせての検版なんてそんな効率が悪い事はやらないけど。)

出力機が変わると結果がかわる例について、セミナーではこんな例をだして説明していた。

IllustratorでY100K100のオブジェクトの上にK0.01~2.0のオブジェクトをオーバープリント属性をオンにして配置する。<見本1>
これをIllustratorのオーバープリント表示で見るとK0.2の塗りから黄色が表示される<見本2>。つまりK0.01~0.19のオブジェクトは「色がない」と認識されている
ところがこれをTrueflow 3 Ver3.12 TF235でRIP処理をかけた出力結果は<見本3>。0%以外は色がある、という判断をされている。

どちらが正しいのか、といえば理論上はTrueflowの結果が正しいだろう。

0.1%だろうが、0.2%だろうがK版に色があるのだから、その部分にオーバープリントが効いていれば下のオブジェクトのK版は無視されるはず。色がないと判断されるIllustratorはおかしい。
ではなぜこんな違いがでるのか、セミナーでは「Illustratorのオーバープリントプレビューと、Trueflowの濃度処理の違い」という説明があっていた。
詳しい説明は省く(というかできない)が要は、濃度の処理においてIllustratorは8bit 256諧調で処理をしている、対してTrueflow 3 Ver3.12 TF235では16bit 65,536階調で処理をする、その精度の差が0.19%以下の認識差につながっているということだった。

まぁこの例はレアケースというか実際のデータではあり得ない指定なのだけど、つまりこのように「アプリケーションでの表示と出力結果が異なる」場合というのは存在する。そのデータを表示(出力)するデバイスによって、データの解析が違うのだ。つまり出力機がかわれば結果も変わる。

このように出力機が違うだけでも処理結果に違いがでるので、印刷会社は「入稿時には出力見本をつけてください」としつこく言うのである。
あなたが見ている出力結果は絶対ではないのだ。

さて、ここからが本題(だから前置きが長いって…)

「出力機が変われば結果も変わる」事はわかった。
それでは、結局作成したデータがどういう風に出力されるのかは、最終の出力機で出力されるまでわからないのだろうか?

従来は、Trueflowで処理した結果は出力するまでわからなかった。
もちろん事前にチェックするために、TrueflowでRIPをかけた結果をTIFF変換して、インクジェットで出力するとか、そういう確認方法はあったけれども結局「一度Trueflowにかけて(RIPを通して)」みないと最終の出力結果を知る事はできなかった。

今回のセミナーで見た面白い物はこの「RIP結果を事前に見る」ための物。

セミナーの中で、パソコンのアプリケーションとして「Trueflowの出力結果をシミュレーションするアプリ」が紹介されていた。
と、いっても実際に動作するところを見た訳ではなく、スクリーンショットでの紹介だったし、ちらっとでてきただけなので詳細はわからない(配られたセミナー資料にもこのアプリケーションについては載せられていない)

出力データ(PDF?)をこのアプリケーションを通してみると、出力結果をシミュレーションして表示する。
画面表示を見た限りでは、ビットマップ展開して表示していたようで、拡大するとジャギーになってみえるようだった。網点の再現はしていない模様。

このアプリケーションが実際どういう役に立つのか?今はまだわからない。(大日本スクリーンがこのアプリケーションをどういう意図で開発しているのかもわからないし)

だた、RIPのない所でも、そのRIPと同じ出力結果を見せてくれるという「APPEというエンジンを使ったアプリケーション」の可能性は感じられた。
APPEというエンジンは別に出力機にのせるだけのものではないんだなー。