ちくちく日記

DTP系備忘録。真面目にやってます。

大日本スクリーン トレンドセミナー2010 -Adobe-

スクリーンのトレンドセミナー2010に行ってきました。

とりあえずセミナーレポート前編 Adobeのセッションから。

演者は、Adobeの岩本さん。

最初に、AdobeのWebサイトの紹介から。
AdobeのWebサイト、お世辞にも見やすいとは言えない。それは(Adobeも)わかってる。ごめんって話から。
製品情報の部分についてはワールドワイド共通で展開しているので、どうしても情報てんこもりで見づらいらしい。

その中で、日本独自の情報発信をしている部分もある。
アドビデザインマガジン http://www.adobe.com/jp/joc/design/は日本からの情報を発信している。
日本の事例紹介として、集英社もあの週刊少年ジャンプInDesignに移行した http://www.adobe.com/jp/joc/design/features/shueisha1.html

これ、知らなかったけど、すごいな…いや、こういう言い方は失礼だけど、週刊漫画というかなりスピードが要求されるものでInDesign
デジタル化へ移行するにしても他に専用システムを組むとかもあったと思うけど、InDesign

他に、アプリケーションのTipsを紹介するTipsコレクションhttp://www.adobe.com/jp/joc/design/tips.html
「あえて、小ネタを集めました」だそうで、難しいテクニック紹介というより、新機能を使うちょっとした小ネタを集めたもの。新しいバージョンを使っていてもなかなか新しい機能は使っていないという人向けらしい。

CS5の出力対応に、大日本印刷凸版印刷共同印刷といった大手が対応表明しました。
大手が正式対応表明で、安心してお使いいただけます。さらに(トレンドセミナーは)今日は出力側のお客様が多いでしょうから、ぜひ、出力対応リストに対応表明を載せて欲しい。とお願い。

Adobe Creative Suite 出力対応店一覧 http://www.adobe.com/jp/joc/design/tips.html には各地方の出力対応店が載っていますが、福岡は…少ない。
対応していないわけではなく、対応しているのだけど、リストに載せてないとこが多い。対応リストに載ったからって仕事がくるという訳ではないけど、印刷会社さんの協力なしでは、新しいバージョンは普及しません。ぜひ出力対応を表明して欲しい、と。

うーん、個人的にはあそこに載ってようが載ってなかろうが客はCS5を使いたければ無理矢理入稿してくるからなぁ…あんまり載せるメリットないかなぁ。出力ショップ的なお店はメリットあるかもしれないけど。

ひとしきり、Webサイトの紹介をした後で、次はCS5の紹介へ。

Photoshop CS5

CS5の新機能紹介

まいどおなじみ、馬を切り抜くデモから。

まず、馬の選択デモ。
馬を切り抜くのに、クイック選択ツールで選択した後、[境界線を調整]パネルで選択範囲を調整する。[エッジの検出]スライダで、選択範囲を微調整できる。
さらに細かい部分の調整には[半径調整ツール]で境界部分をなぞると部分ごとに調整できる。

最後に出力から、選択した範囲をレイヤー等に保存(出力)

次に馬を消す。
先ほど選択した馬、選択範囲をやや広めにとって[塗りつぶしメニュー]から[コンテンツに応じる]を選ぶと、対象の部分をうまく消してくれる。周辺のオブジェクトを複製しつつ、消すので、たとえば木の枝や、柵などが自然に複製されている。

この機能はかなり見栄えがするデモなので、他のセミナーでもしきりとやってるやつ。
実際初めて見るとかなりびっくりする…というか、あまりにも自然に消えるので、あらかじめ背景を仕込んであって、上にのせてた馬を消しただけにしか見えない(笑)

とはいえ、こんなにうまく消えるのはAdobeのデモデータだからでしょ?Adobeはデモが上手だからな…とひねた観客は思うところ。
が、岩本さん曰く「デモだからうまくいくんでしょ?って思われるかもしれませんが、もちろんデモだからここまで綺麗に消えるというのはあります。でも、それ以外のデータでも100点は無理でも60〜70点は行けます!」との事。これだけの処理を手で全部やろうとするより、60〜70点のところまで自動でやって、後は手で修正すればよいのだそうな。


ほんとかどうか、自分でやってみた。


▲ねこさん画像の猫さんを選択して


▲コンテンツに応じて塗りつぶし。

うん。確かに60点〜70点はいけるね。
カーペットがちゃんと復元されてるのはえらい。板目とかがちょっとがたがたしてるのが残念。こういう規則性のあるものより、草とか枝とか雲とかランダムに複製できるものの方が、うまく復元できそう。

あと、64bitモードへ対応した事でパフォーマンスUPしてますって話と、PowerPC環境では使用不可になりましたって話。
DTPユーザーはPowerPC使っている人多いから、PowerPCで使えないって話はしとかないとね。



InDesign CS5
次、InDesign の話。

InDesignもバージョンを重ね、CS5でバージョン7。発売10周年。かなり日常的に使われるアプリケーションになったのではないか?と。
もちろん、IllustratorでできてInDesignではできない事というのはまだある。たとえば、二重三重に重ねられた、ふち文字表現などはInDesignではできない。これはIllustratorが得意な処理。
それと、観音開きのドキュメントデザイン。これまではこういったデザインを作ろうと思ったら、Illustratorで作るしかなかったが、InDesign CS5ではページツールでドキュメント内のページサイズを変えられるようになった。
ドキュメント上でページサイズを変更すると、サイズ変更にあわせて、ページ内オブジェクトも自動的にサイズ変更する。

で、ドキュメント内ページサイズ変更のデモ。

この機能、ドキュメント内でページサイズが変えられるって最初に聞いた時は、勘弁してくれよ…と思ったけど、変更したページ変更にあわせて、トンボも自動でつくのね…!これで評価が180度変わったー(笑)観音とかの折りトンボつけたり、それを活かしてPSはくの面倒だったから(笑)


さらに信号機(プリフライト機能)の紹介。CS4からついたんだけど、あまり使われていないようなので。と、もう一度紹介。
今日の(トレンド)セミナーには印刷会社の人が多いだろうから、ぜひ、印刷用のチェックプリフライトプロファイルを作って、配布して欲しいそう。

プリフライト機能が使われてないっていうより、CS4があんまり使われてないんだよね。というか、CS4が使われだす前に、CS5が発売されちゃったんだよ。

PDFの書き出しについて、いままではフロントで書き出されてましたが、CS5からはバックグラウンドタスクでの書き出しに変更された。
出力現場ではPS を使っている人が多いが、ぜひ今後はPDFの出力に移行して欲しい。PSというのは、もう古い技術だし、書き出されたPSの中には今の出力には必要のない古い情報をたくさん含まれている。との事。


Adobe Digital Publishing Solution

次にAdobe電子書籍への取り組みについて。
トレンドセミナーは日本各地でやってるのだけど、広島で受けた私の同僚は、Adobeのセッションでは電子書籍の話はなかったといってた。
どうやら、地方によってはこの話をしなかった所もあったらしい。


まずAdobeの考えるパブリッシングについて。

電子書籍の分類には、書籍と雑誌、カタログ系があると思うが、この内、書籍については、ePubが本命だと考えている。
epubについては、まだ日本ではメインではない…それは縦組やルビといった日本独自の機能について未サポートであるから。ただし、夏前にはePub3.0という形でこういった機能もサポートされるであろうし、そうなったら積極的に(アプリケーション内でも)サポートしていきたい。
ただし,現状ではそういった(未サポートの)状況であるので、ホールドである。

一方、雑誌、カタログといった部分ではすでにAdobeのアプリケーションをつかった電子マガジンが発行されている。

WIREDマガジン は電子書籍マガジンとして毎月発行されている http://www.wired.com/

この雑誌を作っているのが、雑誌制作ワークフロー(Magazine Publishing Workflow)
必要なのは

  • InDesignCS5(レイアウトデザイン作り)
  • Interactive Overlay Creator(レイアウトにアクション処理追加)
  • Digital Content Bundler(上の二つから電子書籍データ.issueファイルを書き出し)
  • Digital Content Preview Tool(.issueファイルのビューワー)

InDesign CS5をつかって、レイアウトを作り、そこにInteractive Overlay Creatorという、インタラクティブなアクション処理を追加するプラグインを使って、デザイン上のアクション処理を追加する。
Interactive Overlay Creatorで追加できるアクションは、ビデオ、音声、360度表示、画像のパン(ズーム)、パノラマ表示、Webビュー等
InDesignCS5ドキュメント+Interactive Overlay Creatorのデータを、Digital Content Bundlerに通して「.issueファイル」を書き出す。
これをDigital Content Preview Toolでプレビューして閲覧

これらの仕組み(Magazine Publishing Workflow)の使用に必要なのは

PC側

iPad

  • Adobe Preview(AppleStoreで無料ダウンロードできる)


PC側で必要なツール類については、Adobe Labs http://labs.adobe.com/ で現在Adobe Digital Publishing Suiteとして ベータ版がダウンロードできる。
無料なのはベータ版のうちだけだ!今のうちに使ってみとけ!
日本語版マニュアルも用意されている http://adobe-digipub.jp/common/pdf/DigitalPublishing_UserGuide_Japanese.pdf

アメリカであったAdobe MAXっていうイベントでは、Adobe Digital Publishing Suiteの情報も話があったらしい。日本語同時通訳付きでオンライン公開されているhttp://www.adobe.com/jp/joc/max/ondemand/

さて、Adobe Digital Publishing Suiteだが、どうも単なるツールの名前という訳ではないらしい。

セミナーの中ではまるであまりその辺をつっこまれたくないかのように、大急ぎの早足説明しかきけなかったので、詳しくはわからないのだけど
Adobe Digital Publishing Suiteは、ツールの名前ではなく、ワークフローの総称

つまり、電子書籍の制作から、その配信、課金、データ解析などのホステッド型のオンラインサービスとして提供するつもり…らしい。
えーと、つまり、データを作るツールだけじゃなくて、そのつくったデータをアップロードする先のサーバ、そこでのデータ管理、データの販売、さらに販売されたデータの解析までまるっと提供するよと。


このサービス、気になるお値段について

  • PROFESSIONAL EDITION

買ってすぐ使えるターンキーシステム
さまざまなデバイスへの配信が可能(現時点ではiPadのみだけど、いずれAndroidなどのデバイスにも対応予定と言ってた)
単号、複数号、定期購読の購買サービスを提供(雑誌配信とか新しい号がでたら通知とかやるらしい)
すぐに使える基本解析機能の提供

【お値段 月額$699 + issue毎の課金($0.17-0.30)】

  • ENTERPRISE EDITION

他のシステムとの統合が可能
解析機能の拡張が可能
サポートの提供
カスタマイズのためのプロフェッショナルサービスの提供

【お値段 個別見積】



ENTERPRISE EDITIONについては、かなり大きいサービスでの運用を想定したものと思われる。これを適用される事例というのはかなり特殊な例になると思うので、ひとまず置いといて、一般のユーザが使えるとすればPROFESSIONAL EDITION。こちらになる。

しかし、月額$699 + issue毎の課金?
月額$699って、今円高だから93円で計算しても65,007円。さらにissue事の課金。つまり、ファイルをアップロードすると、そのファイルごとに課金される。

えーと、えーと、言いたい事は一杯あるんだが、順を追って言うぞ。


値段、高くね?

これ、高くね?毎月ずーーーっと6万5千円って、高くね?年間使用料なら、まだわかるけど…月額?さらに、その上ファイルごとに課金ってなにそれ。
$699はまだアメリカでのお値段なので、日本ではいくらになるのか(そもそもこの料金体系でやるのかどうか)不明だけど。円高の今だから6万5千円だけど、ドル100円とかで計算されると7万近く。どの程度のサービスが提供されるのかわからないけど、単にツールの使用料として考えると高い。あとはサーバのサービスだけど…これはアメリカでのサービスなので、同じサービスが日本でも提供されるのかなどは不明


これを払うのはいったい誰(どこ)なのか。

アメリカでの事情はしらないが、日本では、データ制作においてかなり分業化されている。
雑誌などのデータ制作でも、出版社がデータまで全部つくってるなんてのはまれで、下請けのデザイナー、DTP屋、印刷会社などがデータ制作を請け負ってるというのが多いと思う。
電子書籍制作についても、そういったところが請け負いで作ることが多そう。
その場合、この月間使用料を払うのは誰なんだろう。多分制作を請け負ったところが、制作コストとしてかぶることになりそうだけど…月額それだけのコストがかかるとすると、定期的にそれ以上のボリュームの仕事をこなせないと利益にならない。
つまり、単発の書籍発行とかじゃだめで、月刊、週刊発行の雑誌とかを、継続して請け負えないと厳しい。だって、仕事がなくても使用料は取られるんだからね!

先の事はわからないけど、現時点で電子書籍出版ってほとんど利益が出てないはず。どこもまだまだ手探りで、そもそも需要がどの程度になるかもわからない。今後需要が見込めるはず(儲かるはず)という見込みがあまりにも絵に描いた餅すぎて、月額$699という値段はそんな状態のものに出すにしてはちょっと高い投資かな…。

単にInDesignから電子書籍にしたいというだけなら、他のツール(ProField社のProBridgeDesigner-iとか)を使うという手ががある。50万ぐらいだったと思うけど、PROFESSIONAL EDITIONとやらを1年使うと考えればおつりがくる値段。
あえてこれを選ぶメリットはあるのか…?


========================================(一部修正)

値段について、YUJIさんに教えていただきました。

Adobe Digital Publishing Suiteの課金というのは
「配信」「販売」「分析」のサービスに対して払うことになるのだそうで、
issueファイルの「制作」部分、ツールについてのお金ではないのだそうです。

つまり、制作者が払うというより、電子書籍を出版する出版社が電子書籍の「配信」「販売」「分析」という部分のサービスを得るために契約するものだそうで。
そう考えると月額$699は高くないらしい。

制作側としてはツールを使って.issueファイルを作るだけなら、さほどお金はかからないみたい。

========================================(一部修正ここまで)



支払いはどうやってやるんだろう…?

小さい問題だけど、これ支払いってどうやってやるんだろう?
セミナー見てた人と雑談した限りでは「クレジットカード払いかなぁ?」という予想が大半だった。アメリカだし。
でも、会社の支払いだとクレジットカード払いって難しかったりするよねぇ。うちはダメだ。まぁ、当然それならそれでなにか別の徴収方法を考えるんだろうけど。


多分、アメリカのサービスそのまま見せてるだけなんだろうけどね

月額$699ってドル表示しちゃってるとこからもわかるけど、これ、アメリカで予定しているサービスをそのまま見せてるだけだよね。
ほんとに日本でこれをやるのかどうかよくわからない。日本の業務形態に見合わないということはAdobeさんもわかってる…のかな?

Adobeもあんまりやる気ない?

月額制という新しい料金形態、さらにサーバーサービスを継続的に提供してそこで料金を取るってのはAdobeにとっては実験的な試みだと思うのだけど、どうもあまりやる気が見られないというか…。アメリカではそれなりに力を入れているのかもしれないけど、日本でどうなるかは微妙な感じ。

と、いうことで、Adobeのセッションレポートでした。
Adobe Digital Publishing Suiteの詳しい話がきけたらなーと思ってたんだけど、あまり詳しいところはわかりませんでした。Webにすでに出ている情報と同じって感じ。


残りのスクリーンのセッションについては、また追加します。