ちくちく日記

DTP系備忘録。真面目にやってます。

OTEdit、OTRollup

仕事で「既存のTruetype欧文フォントの字形を一部分変えて使いたい」ってのがきた。既存のフォントの字形のなかでたとえば大文字のIに横棒をつけたいとか、そういう部分的にカスタマイズしてほしいというの。
いままでこの手の仕事は、Fontgrapherを使ってType1フォントを作成して対応していたのだけど、今回はOS X環境での作業。

もちろん、OS XでもType1フォントは使えるので、OS 9環境でFontgrapherを使ってフォントを作り、それを持ってきて使ってもいいのだけれど、今後Fontgrapherが使えなくなる時の事も考えて、OpenTypeFontを作成してみる事にした。

(余談。OpenTypeFontにしようと思ったもう一つの理由に、OS Xでのフォント管理ツールがType1フォントをうまく認識しないことがある、というのもある。いまフォント管理につかっているMasterJugglerもExtensis Suitcase Fusionも、なぜか欧文のType1フォントで認識できないものがあるのだ。しかもそのフォントは共通ではなく、それぞれ別のフォント。訳がわからん。Suitcase Fusionは最近マイナーバージョンアップしたので、なおってるかなーと期待したのだが、全然なおってなかった。がっかり)

OpenTypeFontを作るにあたって、まず、フォント作成ツールを探すところから。
とりあえず、武蔵システムにOpenType作成ツールがあるというので、そいつをテスト。

OTEdit for Mac
http://musashi.or.tv/oteditmac.htm

1ライセンス8,000円ということだけど、とりあえず30日間は試用できる。
起動してみると、インターフェースはすごくシンプル。なんていうか昔のイラストレータv3あたりのよう。
ベジェ曲線を扱う為のペンツールやイラストレータのパスファインダ合体のような機能もついてはいるのだけど、これですべてのグリフを書き起こすのは、かなり大変。
グリフを取り込むのは、ビットマップからのインポートも可能。つまり、あらかじめ紙に手書きした字形を、スキャナでビットマップ化し、OTEditにインポートしたあと、輪郭をオートトレースさせるという方法。
マニュアルには「手書き風のフォントを作成する場合、OTEditの描画ツールで作成するより、ビットマップから取り込んだ方が簡単です」とあるので、どちらかというと、ビットマップからの取り込みがメインで、OTEditの描画ツールはトレース後のグリフを修正するためのツールという位置づけなのかも。

使い慣れたIllustratorでフォントを作成したいと思う人のためにIllustratorで作ったグリフを読み込む方法もあるにはある。ただし、持って来れるのはSING外字ファイルのみなので、Adobe Creatice suite2 が必要。

手順は以下の通り
Illustratorでグリフ作成→SING外字として書き出し→OTEditでSING外字ファイルをインポートしたあと調整
…これを文字数分。

今回私が作りたいのは、欧文フォントを基にしたフォントなので、実際の字形としては256文字より少ない。ただし、その書体の中の4ウエイト分なので256×4。

…えーと、無理!(笑)
実際この方法で100文字分ぐらい取り込んでみたけど、3時間ぐらいかかった(笑)1文字1文字取り込むために「文字打つ→アウトラインとる→書き出し→インポート→文字幅調整」ってやらなきゃならないので、すごく手間がかかる。しかも文字幅調整に関しては基のフォント情報がわからないので、整合性がとれないし。

フォントを1から書き起こして作りたい人なら、これでもいいかもしれないけど、今回私がやりたいのはもう既にあるフォントの一部分を変えたいだけ。
基になるフォントがOpenTypeFontであれば、OTEditで開く事ができるが(注。OTEdit以外のアプリケーションで作成されたOpenTypeFontは開く事はできるが、そのまま修正したり別名保存する事はできない。ただし、すべての字形を新規ファイルにコピーするという方法はある)Type1FontやTrueTypeFontは読めない

なんとかならんものか、とおもったら、こんなものがあった。

OTRollup
http://musashi.or.tv/otrollup.htm

なにかというと「Fontographer 4.1J で作成したType1フォントから日本語OpenTypeフォントを作成するツール」つまり、Fontographerで作成したType1フォントを、こいつをとおして、OpenTypeFontに変換できるのである。やろうと思えば、Adobe Japan 1-4に対応したOpenTypeFont15444文字分を作る事も可能である。やろうと思えば、だけど。

1ライセンス5,000円。これは試用期間がないので、買うしかない。OTEditとあわせて買ってもらうことにした。購入方法が、口座振り込み後メールでのライセンスキー配布という方法しかないため、会社で買ってもらうのに苦労した。

さて、使い方。
まずFontographerで変換基になるType1フォントを作成する。

私は今回、基にしたかったフォントがTrueTypeだったので、一旦Fontographerで読み込み、Type1フォントに変換したけど、もし、基のファイルが元々Type1フォントだったとしても、必ず一度Fontographerを通して変換する必要がある。
Fontographer以外のアプリケーションで作成されたType1フォントでも読み込みはできたのだけど、うまく情報をよみこめないようで、正しく変換ができなかった。

Type1フォントができたら、グリフをコピーするための、情報定義ファイルを作成する。情報定義ファイルというのは以下の4つの項目からなるCSVファイル。
〈作成しようとするOpentypeフォントでのCID〉 , 〈そこから何文字分コピーするかの文字数〉 , 〈基になるFontographerType1フォントでの16進コード〉 , 〈変換基のType1フォントのファイル名〉

つまりOpenTypeでのCID値とFontographerでの16進コードの対応表を作って、それをつかってグリフをコピーする。
この対応表をつくるのが、結構めんどくさい。
元ファイルの16進コードと変換後のCID値を一つ一つ調べて、対応表を作って…欧文フォントの約240グリフ分ぐらいを作成するのにやっぱり3時間ぐらいかかった。
やろうとおもえば、Adobe Japan 1-4に対応したOpenTypeFontも作れるというのは、つまり、Fontographerで15444文字分の字形をつくり、この対応表を15444文字分つくって変換すればできますよという事(FontographerのType1font 1ファイルに入れられるグリフ数は256文字なので、15444文字分作ろうと思ったら約60ファイル分作らなければいけない…と考えるとあまりやる人はいないとおもうけど)

定義ファイルができてしまえば、変換はあっというまにおわり、OpenTypeFontができあがる。
このまま使うことができるので、OTRollupがあれば、OTEditは必要ないと思うかもしれないが、作成されたフォントの中身をチェックするのに、OTEditもあった方が便利。実際、変換したグリフの中に、なぜかパスがおかしい物があったり、定義ファイルの入力ミスで違うグリフがコピーされたりした場合があった。

Fontographerが使えなくなる日に備えて、OpenTypeFontに切り替えるつもりが、結局Fontographerを経由してのフォント作成になってしまった。