ちくちく日記

DTP系備忘録。真面目にやってます。

ハイデルベルグセミナー感想

ハイデルベルグ・ジャパンのセミナーに行ってきました。
全国各地で行われているこのセミナー、もう既にご覧になった方のレポートもWebにはあがっていますね。
福岡が最終地ということで、後だしじゃんけんみたいですが、例によって私感も交えた感想を。

今回のセミナーのテーマはなんといってもAdobe PDF Print Engine(めんどくさいのでAPPEと以下省略)。
少し前にあった大日本スクリーンセミナーでは概要説明にとどめるという感じだったのですが、今回のセミナーではハイデルベルグのワークフローに絡めた機能説明があっていました。

ハイデルベルグの説明はAPPEではJDFのワークフローになる、という所にポイントを置いているようです。
(現状、JDFで完結できるワークフローを提供しているメーカーがハイデルベルグだけなので、なおさらそこを売りにしたいというのもあるんでしょう)

さて、APPEではJDFのワークフローとはどういう事か?JDFのワークフロー、それだけだったらいままでのCPSIのワークフローでも実現できているじゃない、と思いきや。

ハイデルベルグ曰く、APPEというのは単なるレンダリングエンジンでしかなく、それだけでは何の処理もできない。そのエンジンの処理をコントロールするのが「どういった処理を行うか」を記述したJDFというわけ。

APPEではPDFとJDFが常にペアで処理されます。というか、ペアでないと処理できません。
APPEは、コンテンツデータであるPDFと、そのPDFをどういう風に処理するか、を記述したJDFを一緒に処理することで初めて動作する、JDFが必須のエンジンなのです。

APPEはメーカーにはOEM供給されるのですが、その内部はブラックボックス…。ベンダー側でその内部を修正する事が困難になっています。APPEは処理フォーマットとして、PDFやICCプロファイル、JDFといった標準フォーマットにしか対応していない。
つまり、APPEをエンジンとするRIPでは標準フォーマット以外の独自フォーマットを処理させる事は困難になるということです。

今回のセミナーでは、なんというか「某他社メーカー」への対抗心がちらほらちらほらと見え隠れ(笑)
標準フォーマット以外は処理できない、という話をしきりにはさみ、最後にはAPPEの仕様書を映して「PDFもしくはPDF/Xしか受けないと書いてあります」と。
「なんたらPDF、みたいな独自フォーマットではだめなんです!」えーい、はっきり言え!大日本スクリーンのTrueflow用フォーマット、アウトラインPDFのことだろ!?

APPEが標準フォーマットしか受け付けないから、独自フォーマットはだめだ、ということなんだけど、聞いていて思ったのは、独自フォーマットだって、処理前に標準フォーマットに変換して処理かければいいだけじゃん。
APPEを搭載したRIPの中に、独自フォーマット→標準フォーマットのコンバーターをいれとけばいいんじゃないの?

JDFのワークフローについても、「今後、クライアントからJDFのついたPDFが入稿された時に対応できますか?」と危機感をあおってたけど…。クライアントがJDFのついたPDFを入稿って、どういう状況だろう。

だって、JDFって、はっきり言って印刷会社にしかメリットがないよ。
セミナーではJDFの添付について、Acrobat 7でのJDFの付け方を説明してたけど、今、紙の入稿仕様書だって、めんどくさがって書かないクライアントばっかりなのに、それよりもめんどくさいAcrobatによるJDF添付なんて、なんのメリットもないのに、わざわざしてくれるクライアントいないと思う。

APPEによる処理にはJDFが必要。
それは分かるし、そのためにJDFをつける必要があるのいうのは分かるけど、そのJDFをつける工程は多分、当分印刷製版工程側で行われると思う。

製版側で入稿されたPDFをRIPで処理(処理するときの条件はホットフォルダとかRIPの設定で分ける)→RIP内で処理条件にあわせてJDFを生成、PDFにつけてAPPEで処理…そのままJDFとともに次の工程に渡す…このぐらいが現実的な取り組みじゃない?

もちろん、いつまでもそうやるという訳じゃなくて、ゆくゆくはJDFを頭からお尻の工程までずーーーっと渡していければいいのだけど、現状そこまでできるラインが整ってるところなんて、ないでしょ。

ハイデルベルグの説明するJDFのワークフローには「そのJDFを誰がどうやってつけるのか、そのメリットは何か」というイメージが圧倒的に不足してた。

PDFワークフローと同じで、いきなり頭からそれをはじめようとするのではなく、使えるところから徐々に取り組んでいくべきであって、いきなり「クライアントからJDF+PDFが入稿される」なんて、一番ありえないシチュエーションをだされても、現実感がないよ。

印刷、製版工程から徐々に取り込んでいって、最終的に全部のラインがつながる、という取り入れ方でないと、現場は受け入れられないと思う。

会場から出て、帰りのエレベータの中で一緒になったセミナー出席者の方が「クライアントがPDFにJDFつけて入稿って…」「当分ないよな」と話してたけど、ふかーく同意。